7:名無しNIPPER
2018/05/14(月) 21:03:10.35 ID:xVphMpFA0
――ある日を境に彼女は地下のステージに姿を現わさなくなった。
不思議に思うものは誰もいなかった。
ここはそういう場所だ。
8:名無しNIPPER
2018/05/14(月) 21:03:38.17 ID:xVphMpFA0
「あぁやっぱり」
「よくある事だよ」
「残念だ」
9:名無しNIPPER
2018/05/14(月) 21:04:13.55 ID:xVphMpFA0
――時は流れて数年後
社会人になった俺は毎日くたくたになって家に戻る。
学生時代に好きだったことをするような気力も無く、たまの休日は家で寝ているだけ。
10:名無しNIPPER
2018/05/14(月) 21:04:56.39 ID:xVphMpFA0
安アパートの一室。
カンカンと音を立てて階段を登り、自分の部屋へとたどり着く。
スーツを脱ぎ、テレビの前にドカッと腰を下ろし電源を入れる。
11:名無しNIPPER
2018/05/14(月) 21:05:52.98 ID:xVphMpFA0
このコメンテーターみたいに何かに夢中になれるということはもう無いだろう。
そんな体力はもう残っていない。
仕事をしながら好きな事をやるって大変だな…
12:名無しNIPPER
2018/05/14(月) 21:06:28.01 ID:xVphMpFA0
野球は終盤になり、キャッツは逆転ホームランを食らってサヨナラ負け。
あのコメンテーターが打たれたピッチャーに向けて泣きながら罵詈雑言を吐いている。
「これ放送して良いのかよ…」
13:名無しNIPPER
2018/05/14(月) 21:07:23.82 ID:xVphMpFA0
「今年1位に輝いたのは……」
アナウンサーが読み上げ、画面に映し出されたのは……
あの日居なくなったはずの「ウサミン」だった。
14:名無しNIPPER
2018/05/14(月) 21:07:52.04 ID:xVphMpFA0
――あぁ
彼女は諦めてなんていなかった。
諦めることが当たり前になっていた俺達の想像を超えて、彼女の諦めはずっと悪かったらしい。
15:名無しNIPPER
2018/05/14(月) 21:08:23.70 ID:xVphMpFA0
あの日から結構な時間が経っている
しかし彼女はあの時よりも若々しく…いや、キラキラと眩しく輝いていた。
ステージ上の彼女の仲間達も、その会場に居るファン達も、皆が涙を流して彼女を祝福していた。
16:名無しNIPPER
2018/05/14(月) 21:08:59.03 ID:xVphMpFA0
結果だけを短く伝えるとニュースは終わり、次の番組が始まった。
俺はそれに目もくれず、彼女の活躍を検索していた。
俺が知らなかっただけで、これまでに色々な仕事をしていたらしい。
17:名無しNIPPER
2018/05/14(月) 21:09:33.70 ID:xVphMpFA0
別にそこまで彼女に入れ込んでいたわけでもない。
むしろ今の今まで存在を忘れていた。
しかしあの一瞬、目に飛び込んできた彼女の笑顔は俺の心を確かに震わせた。
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