4:名無しNIPPER
2018/05/14(月) 18:50:56.58 ID:uhnnpcVlO
「プロデューサーさん……」
ほたるの目から涙がこぼれる。ほたるが泣くことは滅多にない。泣きたくなることはしょっちゅうあるだろうに、涙は流さない。
そのほたるが、泣いている。それは、今回のことがそれだけ大きかったということだ。
「…………ほたる」
本当に、すまなかった。
覚悟を決めてそう言おうとした瞬間。
「プロデューサーさん……わたし……」
「やり、ました……っ!」
ほたるの顔が、くしゃりとほころんだ。
「……え……?」
「十一位、十一位です……!属性なんて、六位……! ずっとずっと、圏外だったのに……っ! プロデューサーさんの、お陰です……!」
ほたるは笑っていた。顔を涙でぐしゃぐしゃにして、笑っていた。
(ああ、そうだった)
そう思い出す。
ほたるはそうだった。与えられない不幸を嘆くのではなく。目の前のちいさな幸運を、そっと大事に握り込んで、それを糧に出来る子だった。
おれは馬鹿だ。大馬鹿だ。これはほたるにとっても快挙なんだ。初のランクイン、それが十一位という大健闘。これを喜ばないわけがない。
もちろん、悔しさは有るだろう。だけど。
全力を尽くした自分の担当を『慰めてやらないと』だなんて、まったく俺は。
こんな時、言うべきことなんて決まっているのに。
そっとほたるに歩み寄り、頭に手をやって、軽く撫でる。
「頑張ったな」
ほたるの笑みがますます深まって、
「はい、プロデューサーさん!」
頷いた拍子に、涙がぽたりと床に落ちる。
それはやがて虹へと変わるはずだと、俺はそう思った。
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