26: ◆CItYBDS.l2[saga]
2018/06/08(金) 22:53:01.93 ID:/Kiw1pMk0
――――――
「黄金色の酒だ」
錫製のジョッキを傾け喉を潤す、初めて摂取するアルコールに全身が奮え、舌の上で炭酸の刺激と苦みが踊っている。
その強烈さに、不眠もあってか薄ぼんやりとしていた意識が覚醒していく。
胃は拒絶反応を起こし今にも逆流しそうだが、霞が晴れるようなその快感に俺はジョッキを傾けるのを止められない。
そして、遂にはジョッキの中のビールを全て飲み干してしまっていた。
その様子を、遊び人は満足げに眺めていた。
「……苦い、はっきり言うとあまりおいしくない」
「いい飲みっぷりだったけどね。まあ、初めてはそんなものよ」
「しかし、黄金色の酒ね……なかなか洒落たことを言うじゃないの」
勇者が持っているのは、剣と魔法の腕だけではないということさ。
俺は、自分で言うのもなんだがあらゆる可能性を秘めている。魔王を倒したら吟遊詩人になってもいいかもしれないな。
「麦色」
「私は、初めてのビールに畑一面に広がる麦を連想したものよ。まあ麦酒なんて言うくらいだしね」
「そうか、この苦みは麦のものか」
296Res/317.15 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20