22: ◆CItYBDS.l2[saga]
2018/06/06(水) 22:22:41.16 ID:IZO3JF8l0
そう、禁酒法が制定されたからといって世間が「はいそうですか」と素直に受け入れるわけが無かった
魔王健在の頃、酒は人々から不安を拭い、恐怖から目をそらしてくれた
人々の生活に根差した酒を、完全に法で禁止するなど無理な話だったのだ
現在、酒造りは地下に潜り、秘密裏に製造されラムランナーと呼ばれる密輸業者によって
(彼女の言葉を借りるところの)スリープイージーこと、もぐり酒場へと流されている
禁酒法制定前まで多くの真っ当な商人によって支えられてきた巨大な酒の卸売市場は、法を犯すことを厭わない者達の手へと渡った
そして、その新しい裏市場の担い手の中でも最たる組織こそが、酒造りと同じく地下に潜った犯罪集団魔王一味である
これが、俺が長年続く日課の中で得ることのできた全てだ
「君は、何か知らないか?どんな情報でも構わない」
「それに答える前に一つだけ言わせてくれ。アンタは、酒を注文するべきだ」
「魔王の行方が知りたいなら、なおさらな」
そう言いながら彼女は、ウェイトレスの手によって届けられたビールを口にした
液体が喉を通る音が、ゴクッゴクッと聞こえてくる
「なぜだ?」
思わず、俺の喉が鳴る
なんていい音をさせてやがる
296Res/317.15 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20