遊び人♀「おい勇者、どこ触ってんだ///」
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171: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/05/01(水) 15:26:15.75 ID:/dcHJZ9Q0
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目が覚めると、朝日が昇っていた。
どういうことだ。俺は、千鳥足テレポートに失敗しすぎて遂に時空を超えてしまったのか。
なんてことはなく、酔っぱらっていることが条件の千鳥足テレポートの燃料補給にと酒をしこたま飲んだせいで酔いつぶれてしまったらしい。

結局、俺は一度たりとも千鳥足テレポートを成功させることができなかった。
遊び人曰く、二人でやると成功率があがる。とのことだったが、それにしたって10割失敗というのはどういうことだろう。
俺には、まだ千鳥足テレポートを使いこなすことができないのだろうか。

真っ先に思いつくのは、俺が呪文を間違っていた可能性だ。
だが、この魔法は妙な条件付けが為されている一方で呪文に関しては非常に簡易なものである。
俺は遊び人の隣で、幾度となくこの魔法の呪文を聞いて来た。一言一句違えていないはずだ。

二つ目に挙げられるのは、燃料不足。つまるところ酔いが足らないという可能性だが。
この点、俺は昨日酔いつぶれるほどに、しこたま酒を飲んだ。あれで燃料が足りないということは無いだろう。
いや待てよ。果たして、そうだろうか。

昨日の俺は、本当に酔っていたのだろうか?
そもそも、『酔い』を『摂取したアルコール量』と仮定するのは些か安直な気がする。
だって、酒に強い女もいれば下戸の男だっているんだ。どれだけ酒を飲んで酔っ払うかどうかなんて人それぞれなんだから。

ならば酔いとは何だろうか。
千鳥足テレポートは使用者に何を求めているというのか。

いや、そうではない。
求めているのは千鳥足テレポート自身ではない。
求めているのは、そう。このみょうちくりんな魔法を生み出した元魔王の大賢者。
バー『俗人』のマスターが、客を自らの店へ招き入れる条件だ。

昨日の自分の姿を、ふと思い出す。
酔っぱらって大暴れ、なんてことにはなってはいない。だが、床を水浸しにし、硫黄の臭いを宿に振りまき。
あまつさえ、主人に苦言をていされる始末。今になって思えば、昨日の俺はとても普段通りとはいいがたかった。
とにかく、早々に酔って千鳥足テレポートを試そうとやっきになっていた。
そんな状態で飲んだ酒は、まったく美味しく感じられなかった。いや、そもそもここの酒がまずいのは間違いないのだが。

だが、そんなまずい酒でも、俺と遊び人は素面の状態からたった一杯の酒でテレポートに成功した。
ふむ、なんとなく見えてきたぞ。

水差しに手を伸ばす。
中には、ほんのわずかではあるが昨日の酒が残っていた。
俺は、一息に酒を飲みほした。

遊び人と初めて出会った日のことを思い出す。
そうあれは春先のことだった。この村と似た辺境の片田舎だ。そこの秘密酒場で、彼女から声をかけてきたんだったな。
それから数日後には、二人で教会のワイン樽を全部開けてしまったこともあった。あの日見た、彼女の下着の白さを久しく忘れていた。
一気に飛んで、一昨日も酷い一日だったが。それでも、いいことだってあった。
そう、あの日は彼女が俺の手を引いて秘蔵のカクテルバーに連れて行ってくれたんだった。

俺は、あらんかぎりの彼女との思い出を引き起こす。
ワイングラスの関節キッス。純白のパンツ。彼女の小さく柔らかい手。
この部屋には、鏡がなくてよかった。おそらく今の俺は、とんでもない間抜け面をしていることだろう。
そうすると、僅かな酒しか体に居れていないというのに、不思議と頬が熱くなってくる。
俺は、成功を確信して呪文を唱える。


「ちどりあしてれぽーと!」


この魔法は、ネガティブな気持ちじゃ使えない。


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