112:今日はここまでです ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/01/08(火) 22:25:42.00 ID:LgZWL0Kj0
――――――
「魔王はどこにいる!?」
体術の使えない狭い厠で二対一での魔法の打ち合いともなれば、結果は語らずとも明らかであろう。
縄で後ろ手に縛られた魔王軍幹部が、神妙に首を垂れている。
あまりに可哀そうだったので、ズボンだけは俺が手ずから上げてやった。
「……」
俺の問いかけに、魔王軍幹部はその面を上げる。
赤みがかった肌に、額に生えた日本の角からは東の国で語られる地獄の獄卒を彷彿とさせられる。
赤鬼の目がギョロっとこちらを向いた。その漆黒の瞳には俺に対する強い敵意がこもっている。
排泄中を急襲されたのだ、怒髪天になるのも無理もない。だがしかし、誰が好んでおっさんの排泄シーンを急襲するであろうか。
不可抗力である。責任の所在は、少なくとも俺のところにはない。
「勇者。こいつは、魔王軍四天王がひとり炎魔将軍。魔王の側近中の側近だよ。」
「こいつがそうなのか?」
再び鬼の顔を見る。なるほど、魔王軍残党の中でも極めて高い戦闘力を誇ると言われる炎魔将軍、別名『黒き炎』の人相書きにそっくりだ。
「お前の二つ名が『赤尻の男』なら、もっと早く正体が割れていたんだがな」
部屋の中が、冬の澄み切った朝のような静寂に包まれる。
どうやら、冗談の通じる相手では無いようであった。
296Res/317.15 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20