110:今日はここまでです ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/01/07(月) 23:10:57.91 ID:LJEQkzAO0
目を開けると、鼻先には地獄の赤鬼。で、あったらどれだけ良かったであろうか。
少し皺が寄り、黒く太い毛が大量に茂っているそれは。地獄のサルの「赤尻」。
でもなく、誰とも知れぬ汚い生尻であった。
その様相からして間違いなく、彼女の尻ではないことだけはわかる。彼女の尻が、こんなにオゾマシイものであるはずがない。
「きゃあああああああああああああああああああああああ!」
尻の持ち主が、まるで女みたいな悲鳴をあげる。あくまで「女みたいな」悲鳴である。その実、尻の雄々しさに違わぬ、酷く低いしわがれた声だ。
しかし無理もない。勇者たる俺であろうとも、突然尻の先に見知らぬ男が現れたら恥も外聞もなく黄色い声を上げるであろう。
というか、むしろ叫びたいのは俺のほうである。こちらからしてみれば、鼻先に突然見知らぬ尻が現れたのだ。
見知らぬ男と、見知らぬ尻なら間違いなく見知らぬ尻のほうが恐ろしいではないか。
かろうじて俺が声を上げずにいられるのは、この汚い尻を前にして口を開けることが至極恐ろしかったからである。
尻から距離を取るべく、足に力を入れるが徒労に終わる。
身動きがとれない。重力を頭上に感じる。どうやら俺は、ひっくり返っているらしい。
「あ、こいつ魔王軍幹部だ!捕まえろ勇者!」
どこからか、遊び人の声が聞こえてきた。
声の反響具合から、この部屋の大きさがおおよそに知れた。
狭い個室、尻を丸出しにした男、察するにここは厠だ。
できれば、察しないままでいたかったが。
「拘束魔法 フリーズ!」
「さ、させるか!反射魔法マジックミラー!」
「詠唱封印 サイレント!」
「効かぬわ!獄炎魔法 ヘルファイア!」
遊び人の詠唱を皮切りに、俺たちと魔王軍幹部との戦闘が始まった。
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