6:名無しNIPPER[saga]
2018/05/06(日) 22:11:21.13 ID:Z6NbnlKA0
「あ、あわ、あわわわ」
私の口から奇妙な声が出る。
逃げないと。
逃げないといけない、のに。
足が動かない。
ガクガクガクと震える足が、言うことを聞いてくれない。
早く、早くこの部屋から出ないといけないのに。
「あの子達」は、私にまだ気づいていない。
きっと、栄養士さんを食べるのに夢中で、気づいていないのだ。
だから、今のうちに早く……。
利己的な判断を下そうとしていた私の耳に、声が聞こえだ。
「ひゃぁっ」
それは横たわる栄養士さんの声だった。
「あの子達」に噛みつかれている栄養士さんの声。
けれど、それは苦痛の声ではないように感じられた。
どちらかと言うと、逆の方向性の声な気が……。
「や、やぁっ……」
よくよく見ると、奇妙な事があった。
栄養士さんは、あれだけの数の「あの子達」に噛みつかれている。
本来なら大量出血しているはずなのだが……。
見える範囲で、床に血は飛び散っていない。
乱れた服にも、血の跡はない。
何故?
どうして?
ひょっとして、「あの子達」の中に優しさ的なものが残っていて、栄養士さんを傷つけないようにしているとか?
疑問を晴らすために、私は息をひそめたまま「あの子達」を観察する。
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