白菊ほたる「もう雨あがりに虹が掛かることもないんでしょうか」
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名無しNIPPER
[sage saga]
2018/05/01(火) 15:06:16.46 ID:47m1SMXJ0
藍子さんは、星空を見上げていました。
私もつられて見上げると、やっぱり月が輝いていました。
日が昇らなくなってからは、この月こそが空で一番明るい星です。
立ち込める湯気に遮られていてもなお、目がくらむほど眩しい光です。
「きれいですね」
藍子さんはそう言うけど、私は何の返事も出来ませんでした。
日が昇らなくなって以降あの月はずっと満月で、南の空から張り付いたように動きません。
まるで、地上にいる私たちが慌てふためくのを見て楽しんでいる、意地悪な神のようです。
古来、月は狂気をもたらすものだったそうです。
ならこの狂ってしまった世界では、あの月が支配者なのでしょう。
あるいは、狂ってしまったのは私なのでしょうか。
あの月は私にとって、ずっと続くこの夜の象徴です。
心の底から綺麗だと言うことは、きっと出来ないでしょう。
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