82:名無しNIPPER[saga]
2018/11/15(木) 22:11:25.21 ID:fN5d1hik0
☆
美樹さやかはエレベーターで一階の待合室まで降りてきた。
そこには親友の鹿目まどかが雑誌を読みながら待っている。
彼女はさやかの姿を見つけると、軽い調子で呟く。
「あれ? 結構早かったんだね。もしかして上条君と会えなかった?」
「いや、病室にはいたんだけどちょっと体調が良くないみたいでさ……。お土産だけ渡して、帰って来ちゃった」
「そう、なんだ。それは心配だよね」
不安そうな表情をするまどか。
さやかと小学校時代からの親友であるまどかにとって、その幼なじみである上条は知らない仲ではない。
そしてさやかが彼の様子に対してどんな思いでいるかも分かっているつもりだ。
「でもCDは渡せたんだよね? それならきっと大丈夫だよ。だってさやかちゃんが一生懸命選んだんだから。それを聞けば、きっと上条君も元気だしてくれるよね」
「そうだと、いいんだけれど……」
「……?」
何だか歯切れの悪い反応に、まどかは不思議な顔をする。
そんな様子に気づいたのか、さやかは何でもないよと笑って言う。
「いやいやその通りだよね! むしろそうでなきゃ一緒に選んでくれたまどかにも失礼だよ!」
「え!? いや、別にわたしは何も……! あれはさやかちゃんが上条君の為を思って選んだものなんだから。今は気分が乗らないかもしれないけど、絶対気持ちは伝わってるはずだよ」
「そうそう。大体2700円もしたんだから、ちょっとは喜んでくれないと散っていったあたしの数少ないお小遣いたちが浮かばれないっつーの!」
金額の問題じゃないと思うけどなあ、とまどかは呟き、二人は病院を後にする。
病院の駐輪スペースはエントランスの裏手にある。
さやかの自転車を取りに行く道中、彼女たちが人通りの少ない、側面のガーデニングスペースへ通りかかった時だった。
「ん?」
と、さやかが急に立ち止まった。
彼女の視線の先……、コンクリートの壁に何か小さなものが突き刺さっている。
「これって……」
まどかも続いて視線を向け、ぼそりと呟いた。
イヤリング程の大きさに、球状になった中央部は禍々しくも感じる怪しい光を放っている。
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