67:名無しNIPPER
2018/06/12(火) 06:49:43.80 ID:psAQX80k0
垣根はハァ、と息を吐いて言った。
「まずこの解析アプリはあくまで"推測"するだけだ。完璧じゃねえ」
「まぁそりゃそうでしょうね。口の動きから分かるのは母音だけですし。それを一定の法則に当てはめて最も自然だと思われる文章を作るのが読唇術っスから」
「そうだ。その点を踏まえてだ。何言ってるかさっぱり分からん」
半ば投げ出すように言って、テーブルの上のタブレットを誉望の方へ滑らせる。
タブレットには推測された会話内容が羅列されていた。
それらを読み進めていく内に、彼は自分の表情が険しくなるのを感じる。
「……何スかこれ? 魔法少女? ブリーフシード? ホールジェム? 何言ってんスかこの子たち」
「な? 訳分かんねえだろ?」
両手を広げ肩をすくめながら垣根は呆れるように言った。
あくまで推測の為、本当にこの言葉で合っているのかは分からない。
だがそれを抜きにしても、内容がとても現実的ではない。
何かファンタジー小説の話でもしてるのかと思った。
「アニメオタクか重度の中二病ってやつっスかねえ……。とてもそんな風には見えないっスけど」
「俺もそう思ってさっきまで調べてたんだがそんな作品は無かった。つかそんな雰囲気じゃねえしな」
誉望もそれには同意だ。
彼女たちの表情を見る限り、楽しそうな様子は微塵もない。
まるで戦場へ向かう武士のように強張っているように見える。
「……てことはマジなんスか。この魔法少女とか魔女とか」
「分からん。だからグレーだ」
「でも、本当だとしたら巴マミ1人だけじゃなくてこの2人も共犯って事ですよね? もしかしたらもっといる可能性もーー」
「だから確かめる必要があるんだよ」
誉望の声を遮って垣根はきっぱりと言い放つ。
「何にしろ相手の全容が分からない内は迂闊に行動できねえからな。学園都市製じゃないなら尚更だ」
先日学園都市を襲った謎の攻撃。
その脅威は今でもネット上を染め上げているほどだった。
もしそれと同一犯なら、たとえ7人しかいない超能力者でも油断はできない。
彼は続ける。
「もし勘違いならそれでオーケー。黒なら黒で、接触する前に向こうの陣容を把握しときたい。巴マミっつったか? この2人も含めてコイツの周り、くまなく洗え」
「了解っス」
短く答える誉望。
垣根は改めてタブレットに向き直ると、防犯カメラのログから彼女たちの動きを追う作業を再開した。
「にしても魔法少女に魔女と来たか。何が来ても驚くつもりは無かったが、中々にぶっ飛んでやがるな」
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