小日向美穂「神様にはセンチメンタルなんて感情はない」
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50:名無しNIPPER[saga]
2018/04/24(火) 22:58:51.97 ID:WQSNhX7B0
「でも、どうして?」

そう言ったのは卯月ちゃんからだった。

「思い出したんだ」

夜空を見上げていた卯月ちゃんが私のほうを振り向いた。
その天使みたいにかわいい顔に、飴たちが燃え尽きる炎の悲しい光りがちらちらと当たってかがやいていた。

「なにを思い出したの?」

「私がどうして卯月ちゃんをお姉ちゃんって呼ぶようになったのかってこと」

たぶん物語の始まりには色んなきっかけがあって、それはもしかすると卯月ちゃんと映画を観に行ったのが最初だったかもしれないし、もう少し遡れば卯月ちゃんとお化け屋敷に入ったあの瞬間からかもしれなくて、でも究極的には宇宙がいまも回り続けていることがすべての始まりなので、結局、私たちは元いた場所に戻ってきてしまうのだ。

だから私がなぜ卯月ちゃんをお姉ちゃんと呼ぶようになったのか、その理由を説明するのはそんなに難しいことじゃない。

「前にさ……自分はからっぽなんだって、卯月ちゃんそう言ってたよね」

「うん……」

「私もやっと気が付いたんだ。私たちって本当は何者でもない、ただのからっぽの存在なんだって……」

「うん」

「それでね。たぶん私って、私以外の誰かがいるから私になれるんだと思ったの。私の真ん中の部分はからっぽのままだけど、でも私のまわりとぐるぐる回る世界があるから、私は私の形でいられるんだ、って……」

「…………」

「でもね。やっぱり人って自分がからっぽなことには耐えられないんだと思う。さみしくて、せつなくて、こわくて、だから私たちは自分以外の誰かの近くにいようとして、それでからっぽの自分を埋めようとするの」

「……でも美穂ちゃんにとっての私は、たった一人の私じゃなかった?」

「そう、だから私は卯月ちゃんのことをお姉ちゃんって呼ぶことにしたんだと思う。世界中にいる卯月ちゃんの中でたった一人、私だけの卯月ちゃんを独り占めしようとして……」

「ごめんね」

「ううん、私こそずっと気がつけなくてごめんね」


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