小日向美穂「神様にはセンチメンタルなんて感情はない」
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46:名無しNIPPER[saga]
2018/04/24(火) 22:54:37.36 ID:WQSNhX7B0



ずっと祈りつづけていた。

天国への階段はマンションの部屋の窓からも見えるようになっていて、しかもすごく遠くにあるのにとても近くに見えるくらい大きかったから、毎朝毎夜ベランダに出て祈りを捧げるたびに私は何か偉大な存在に見守れているような気持ちがした。

卯月ちゃんにもう一度会えますように。
天使にもっと近づけますように。

そうして祈り続けるうちに私はひとつの真実に気がついた。

私の祈りは、卯月ちゃんのことを忘れないための祈りだということを。
卯月ちゃんを忘れたくないという願いのために祈っているのだということを。


やがて私の祈りの言葉はこんな風に変わった。

卯月ちゃんがいつも私のそばにいてくれますように。
私から離れて行ってしまいませんように。……


私はすでに祈りによって救われていたのだった。

思い出のすべてを取り戻した私はもう、天使の夢を見ることはなくなった。

代わりに色んなことを考えるようになった。
それはたとえば、文香さんのことだったり、ありすちゃんのことだったり、あるいは昔いた友達の――私はお姉ちゃんと呼んでいたけれど――研究していたテーマについてだったり。

私はあんまり賢くなかったから考えるのにも限界があって、でもそれを考えることはなぜか私にとって必要なことのように思えて、ときどき文香さんやありすちゃんとお話したり、天使にまつわる論文を調べてみたりして、そうして私と私以外のいろんな物語について考えつづけた。



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