小日向美穂「神様にはセンチメンタルなんて感情はない」
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45:名無しNIPPER[saga]
2018/04/24(火) 22:53:29.87 ID:WQSNhX7B0
「わたしこっちがいい」

私が指差したのは粘土で作られた動物たちが冒険するアニメ映画でした。
お姉ちゃんは呆れたように溜め息をついて、

「そういう幼稚なのはもう卒業したら?」

なんて言うから私はムキになって反論して、それでちょっと喧嘩してしまいました。
でも最後には仲直りして、結局どっちも観に行くことにしました。
本当はあんまり乗り気じゃなかったんだけど、戦争映画のほうはお姉ちゃんがお金を出してくれると約束してくれたので。

それに、せっかくここで上映されるなら、観てあげないとかわいそうだなって思ったのです。

なぜならここは世界中で生まれた物語が漂流して最後に行き着く場所だからで、ここで私たちが観てあげないときっといつか忘れ去られて消えてしまうからです。

私や私の友達はこのとても大きな長い(星を一周するくらい長い)建物のことを世界の果てだとか天国に一番近い場所だなんて呼んだりするけど、お姉ちゃんに言わせればここはただ祈りを捧げるためのグウゾウにすぎないんだって。

グウゾウっていうのは調べたら神様を真似して作った神様そっくりのレプリカのことで、祈りを捧げるためのものらしい。
前にお姉ちゃんにそのことを話してみたらなぜか神妙な顔つきをしてこんなことを言われました。

「願掛けじゃないんだから、お祈りしたからって物事が良い方向に向かうとか期待しちゃダメよ。神様にはそんなセンチメンタルなんて感情はないんだから」

確かに、あんな奇妙な四角い姿をした神様には感情なんてなさそうだなって思う。
どっちにしろそれは何か目的があって建てられたものには違いなくて、けれど今はもう誰もその目的を知らないのでした。

でも、なんのために作られたかは分からなくても、私たちは暇があればここへ遊びに来て迷子になった物語たちを拾ってあげます。

だから、もし私の物語がみんなから忘れ去られて最後にここに辿り着くことがあったら、ちゃんと拾ってくれたら嬉しいなって思います。

あ、そうだ。
もしその時が来たら、次の物語にうまくバトンタッチできるように最後はこんな風に言おうと思っています。

私たちは幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。




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