小日向美穂「神様にはセンチメンタルなんて感情はない」
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16:名無しNIPPER[saga]
2018/04/24(火) 22:33:05.57 ID:WQSNhX7B0
その日の夜、卯月ちゃんは私より先にマンションの部屋に戻っていた。

「おかえり〜、遅かったね」

お姉ちゃんはまるで一日中そこにいたみたいにソファに寝転がって雑誌を読んでいた。
私はなんだかホッとしたような呆れたような気持ちで溜め息をついた。

「もう、どこ行ってたの? 心配したんだから」

お姉ちゃんは困ったような笑顔で「ごめんね」って言うだけだった。
むしろ謝らなくちゃいけないのは私の方かもって気がしたけど、お姉ちゃんは全然そういうのは気にしてないみたいだった。

「でも、よかった。もう二度と会えないんじゃないかと思った」

「美穂はおおげさだなぁ」

「ていうか、どうしていなくなっちゃったの?」

「私もね、分かんないんだ。朝起きたら美穂がいなくて、先に学校に行っちゃったのかなって思ったんだけど玄関に靴はあるし、わ、どうしよ、って慌てたんだけど私も学校に遅刻しそうだったから急いで家を出たの」

「遅刻しちゃったの?」

「ううん、なんとか間に合った」

私は遅刻したけどね。
とは言わなかった。

「きっともう1人の私が美穂をさらって行っちゃったんだ、って思ったの。私だけが美穂を独り占めするのは良くないってことで、世界中の私が美穂を奪い合ってるんだ、って」

それからお姉ちゃんはソファから立ち上がって、私をそっと抱きしめた。

「ごめんね」

お姉ちゃんの声は震えていて、それで私は心のなかでこう言った。
ちがうよ、お姉ちゃんを独り占めしたかったのは私の方……
こんなにくっついたらまたお姉ちゃんが見えなくなっちゃうよ、って。


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