4: ◆E055cIpaPs
2018/04/21(土) 22:46:39.71 ID:0nbIURfu0
炎上した。
未遂なんて言葉で濁してはいるが、あれは紛れもない炎上だった。
匿名のアカウントから届く大量の無責任なアドバイスを前に、彼女は僕としたリプライ機能使用禁止の約束の事も忘れて、スマートフォンに噛り付いて行ったネットユーザーとひたすら議論をし続けた。
その議論の痕跡は、今でもネットのあちこちに残されている。
その事件は悪質なユーザの悪戯として処理されたものの、古くからのファンの間ではあのアカウントの中にいたのが橘ありす本人だということは公然の事実として扱われており、あれから彼女がガジェットやネット関係の仕事をすると良くない盛り上がり方をするようになってしまった。
この事件はありすの中でもかなりのトラウマとして刻まれていて、一時期はタブレットを持ち歩くことさえなくなっていたのだが。
「もう”ありふみのネットに弱い方”だなんて扱いは懲り懲りなんです!」
「私が文香さんにツイッターもブログも教えたんです!」
そう、文香が趣味を兼ねて始めた読書ブログが雑誌に大きく取り上げられ、それがきっかけとなって彼女が大ブレイクしたのだ。
もともと、非常にマイペースなタイプの彼女である。
自分のペースで時間の制限も無く自由に話し続けることができるインターネットの文化は、性に合っていたのだろう。
もちろん、最初の指導者の腕前に恵まれたことも理由の一つだ。
しかし、それ以上に彼女の長年の読書で磨かれた感性と豊富な語彙力、そして底なしの好奇心はインターネットの文化とマッチし、彼女は読破した書籍や事務所の同僚に連れられて見に行った映画や舞台の感想記事を恐るべき品質で作成し続け、それら全てでネット上の話題をさらっていった。
結果、彼女は一風変わった文学少女として芸能界での立ち位置を確立し、今やトップアイドルへの道を驀進中なのである。
少しの巡り合わせがあれば、ありすが背負うはずだった「ネットに強いアイドル」という肩書さえも取り込んで。
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