27: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:35:02.84 ID:Q3vY7Opm0
高校一年の夏休みと冬休みはアルバイトに精を出しました。
そういうのを禁止する高校じゃなかったから、社会経験ということで説明をつけて。
働いて勉強して、アイドルのことも喋り方も勉強して、疲れたら熊さんを撫でて。
28: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:35:51.15 ID:Q3vY7Opm0
〇
どこからどうやって切り出したものか。
29: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:36:24.74 ID:Q3vY7Opm0
なんでも婦人服のセールがあるとかないとかいう話で、三人で行ったのは鶴屋百貨店。
お休みの日にわざわざ職場に行くことにお父さんは難色を示しましたが、ついにはお母さんに押し切られて。
婦人服売り場に突撃するお母さんを見送り、私達はぽつんと取り残されました。
30: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:37:18.89 ID:Q3vY7Opm0
……ついてきちゃった。
「わぁ……」
31: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:38:32.41 ID:Q3vY7Opm0
「うん。……そうだね」
街は更新されていく。
それを寂しく思う気持ちは確かにありました。
32: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:39:31.62 ID:Q3vY7Opm0
「色々しよったんは知っとる。バイトで金ば溜めとったことも」
「も、もしかしてお母さんから聞いて……?」
「お前がバイトしよったとこの社長は俺の大学ん時の先輩じゃ」
33: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:40:22.37 ID:Q3vY7Opm0
「……え」
「お前がしゃんむっでん(どうしても)やりたかことは、ようわかった。俺に似てもっこすじゃ」
「そ、それじゃあ……」
34: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:41:08.27 ID:Q3vY7Opm0
「――」
体が震えるようでした。
35: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:41:43.81 ID:Q3vY7Opm0
震えはついに、はっきりそれとわかるほどになりました。
「嬉しいよ、私。認めてもらえて嬉しい。嬉しいんだけど……」
36: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:42:17.61 ID:Q3vY7Opm0
「本当の本当に、行くんだ……って。行っちゃうんだって」
「私がんばるって、できるもんってずっと思ってた、けど」
37: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/04/20(金) 00:43:41.59 ID:Q3vY7Opm0
そんなこと、今まで誰にも言ったことがありませんでした。
身を投じる現実が、いかに広くて不透明か。
壁を越えた先にある「それ」の重さが、今思い出したように一気に体にのしかかってきたんです。
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