111: ◆PL.V193blo[sage saga]
2018/04/23(月) 07:11:14.37 ID:uqQOtxCi0
「……村の者はそんな太夫を憐れみ、いつか後の世に、二人の魂が再び巡り合えるようにと、二人の生まれたこの地に社を建てたということだよ。」
語り終えた後、お婆さんは曲がった腰をよいしょと伸ばすように、楓さんの事を仰ぎ見た。
「お嬢ちゃんも、溜息が出るほど綺麗やねえ。なんとかっちゅう芸能人に似とる。なんと言うたかな、えーっ……」
少しぎくっとした。一応、変装はしてもらっているんだが。
お婆さんは眉間に皴を寄せ、えーっ……と思慮していたが、結局、思い浮かばなかったのか、答えは言わず、言葉を続けた。
「きっと伝説の鯉風大夫も、お嬢ちゃんのような別嬪だったんやろうなあ。気を付けなさいよ。美人は薄幸の相ともいう。その傍らの佳い人に、きちんと守ってもらいんさいな」
お婆さんの深い色の瞳に見つめられた気がして、思わず気を付けした。
一筋の強い風が吹いた。とっさに目を伏せた間に、お婆さんはもう、いなくなっていた。
祠は、静かに風を受けているだけであった。
「なんというか……切ないお話でしたね。逢えてたら良いですね、その二人……楓さん?」
歩みを進めようとしたら、隣に居なくて。
振り返ると、楓さんは、まだその場にいて。
「プロデューサー」
胸に片手を湛えた楓さんが、言う。
「聞いてほしい、言葉があります。」
きらきらの、まっすぐな瞳だった。
「プロデューサー、今まで、ありがとうございました。」
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