高垣楓「君の名は!」P「はい?」
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101: ◆PL.V193blo[sage saga]
2018/04/23(月) 06:48:50.31 ID:uqQOtxCi0
◆◆◆◆

戦うと決めれば、あんがい、生き延びるもんじゃのう。
あっちへ行っても敵、こっちへ行っても敵。日ごとにわしらの居場所は少なくなり、海峡の向こうの最果ての土地まで追いやられて、それでもまだ生きとる。
生きようと思う。大したもんだのう。
だども、そろそろこの国に、わしらの生きれる場所が無くなるな。
来るべきものが、来る。

戦いの火ぶたは、沖からつるべ撃ちに降らされたカノン砲の艦砲射撃じゃった。
霧の立ち込める箱館湾にやがて姿を現したる、びっしりとわしらを包囲した、旗、旗、旗。
ご天朝様の菊章旗をど真ん中に、長州、薩摩、佐賀に土佐。中津に、岩国……西国だけじゃねえ、関東は新発田、忍、上田に飯山。東北は三春、米沢、津軽も。
徳川ご譜代は水戸に尾張に彦根に……ふっ、紀州もおったか。
すンげえもんさな、こりゃあ。この国にまつわるありとあらゆるすべてが、わしらの敵になった。
喧嘩屋・土方副長の真骨頂じゃな。日本まるごと向こうに回して、一世一代の大喧嘩じゃ。
土方さんの、声が聞こえる。

――――新撰組副長、土方歳三!!
遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ。誠一字を背に掲げ、蝦夷の果てまで戦い抜きし、我ら精忠国士なり。
衆を恃んでここまで圧してきた貴公らとは、覚悟の嵩が違い申す。
――――さあッ、死にてえヤツからかかってきやがれッ

姿は見えねぇ。この弁天台場の土けぶりと砲撃の轟音じゃ、聞こえる筈はねえ。
けんど、聞こえる。馬上で高らかに叫び、戦場を駆け抜ける鬼の副長の大音声が。

そうよ、新撰組さ。きっとわしらほど戦って戦って、戦い尽くしたやつらも居らんだろうさ。
京の四辻を朱に染めて、甲州、宇都宮、会津、仙台、そして箱館……この国の戦場という戦場が尽きるまで戦い続けた、わしらの名は、新撰組じゃ。

黒い霧を成して、弾丸の幕が降ってくる。地獄の扉が開いとる。
閉じたまんまの右目の奥が、暖けえ。

――――俺ァ、この眼は、あんがい気に入ってんのさ。

俺にゃあ、土方さんのごたる、かっこええ生き方は、とてもできね。
俺の誠は、ちっぽけさ。そのちっぽけな誠ば、砕かれまいとするが、俺の士道よ。
おまんは俺に、生きろというた。誓いじゃから、俺は最期まで、その通りに生きる。
俺の手紙、ちゃんと届いたかな。
あそこに書いてあることが、俺のすべてで、おまんへの、本音じゃ。
嘘偽りは、ねえよ。俺はおまんに、嘘ば吐いたことはねえ。
どうか、生きてくれ。
どうか、幸せになれ、楓。



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