19: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:34:42.78 ID:3cTkaN/s0
そうして今日も、僕は教壇に立つ。
事務所での会談から数日後、姉さんによる記者会見が行われた。
アレは、同じように地球に来ていた兄である。熱愛報道は事実無根である。
それが会見の要旨であり、実際に「ウサミンの兄」も会見には同席した。
翌日昼のワイドショーではその男性の顔にはモザイクがかけられ、声も加工されていたけれど……まあ、見る人が見れば、すぐに僕だとわかるだろう。
なんてことはない。弟が年上になってしまうのが問題なら、兄であるという嘘をついて、ついでに兄も両親もウサミン星人ということにしてしまえばいい。
姉さんはあまり乗り気ではなかったようだけれど、ファンや自分を名誉ウサミン星人にしておいてそれはないだろう、というプロデューサーさんの意見に結局は押されたようだった。最終的には世界中の人間がウサミン星人になるのだから、肉親がウサミン星人だからって何の問題もないだろう、と。
ウサギの耳を被るなんて経験は生まれて初めてだったけれど、おかげで世間の反応は上々だったようだった。兄想いのいい子、なんて言うコメンテーターもいたし、やっぱり面白いなあ、と笑う芸人もいれば、名前を売るための騒動だったんじゃないかと疑う人もいるらしい。
みんな、アイドル安部菜々のことが気になっている。
幼い姉の歌う姿を知っている僕は、そのことがなんだか無性に嬉しかった。
それで……まあ、さて。
教卓を挟んで教え子たちの顔を見まわす。大丈夫、覚悟はできた。
「先生な、みんなに秘密にしてたことがあるんだ」
教師としての充実した日々を送るために。姉さんの名誉を守るために、僕も嘘をついてみるとしよう。
「なんの話か分かった人もいるかもしれないけど、まあ、笑わないで聞いてくれ。先生の故郷は、実は――」
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