2: ◆.s5ziYqd8k
2018/04/16(月) 21:59:05.18 ID:xaEfnyHJ0
真っ白な空気。息を吐くと肺の底から冷たくなる。
睨みつけた的が小さく震えて、指から離れた矢がいつの間にか貫いていた。
……。
足が冷たい。礼をして、外を見ると、薄暗い空が見える。そこには何も見えるものなんかない。
でも、不思議なものでそこには街があるのだ。人工衛星でも、肉眼でも、赤外線でも見えない不思議な街。
「凄いねユミカ。一発だね、さすがぁ。県大会は貰ったね」
「それならいいけど……ん」
親友はにこにこ笑って、容姿に見合った可愛らしい声を上げている。人から良い注目をされるのは凄い。
私は、そうでもない。女子としては少し低めで可愛らしさが無い。
大きくて、目が険しくて、声が低い。私は最悪だ。
矢をもう一度つがえる。私の自慢と言えるものはこれだけ。
「なーいす。百発百中だね」
二人だけの弓道場に親友の声が響く。こんなもの、なんの役にも立ちやしないのに。
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