工藤忍「おかしなうさぎは夢見て跳ねる」
1- 20
31: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 11:55:33.49 ID:X17K8DuQ0


 少し行儀悪いけれど、コンビニの前でふたり、肉まんを頬張った。
 ガラスから漏れる光は、いつのまにか夜闇を明るすぎるくらいに照らしていた。
 緩んだ気持ちから、どちらともなく、ぽつぽつと話し始める。

「おまけ集め、好きなんだっ」

「そりゃ、変わった趣味で……」

「変わったとはなにさっ」

 年頃の女の子の趣味してはニッチすぎだろう。
 忍が部屋の中をおまけだらけにして困っている姿が浮かんで、笑う前に慌てて頭から追い出す。

「この辺だと、あんまり売ってなくて寂しいんだよね」

「ど田舎だからなぁ」

「ふふっ、海と山と、広い空だけだもんね」

 流石に海の匂いはしないけれど、星の煌めく空と向こうに陰る山は何もないことを教えてくれる。
 そんな退屈でつまらない街だと、短いながらも僕はずっと思って育ってきた。

「でも、今日みたいな日に夕焼けが綺麗に見える場所があるんだよ! 海の方で、すっごく静かなの」

「おう……いつか連れてってよ」

 それでも誰かと一緒なら楽しいのかもしれない。
 この不思議な女の子のせいで、僕は確かにそう思い始めていた。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
77Res/84.74 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice