「それでは、勇者の面接を始めます」
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73: ◆CItYBDS.l2[saga]
2018/04/13(金) 16:45:58.20 ID:/2tjzfVC0

行政官「そうです。だが、私たちの仕事は、彼らからそれを奪うものだ」

行政官「魔王が健在な今、私たちが誰かを『勇者』であると認めてしまえば冒険者達はどう思うでしょうか」

剣聖「・・・」

行政官「『魔王討伐は勇者に任せよう』『勇者なら、きっとやり遂げてくれる』『勇者なら』」

行政官「その瞬間、彼らは魔王を打倒すという目的を勇者に託しかねない」

行政官「私たちが仕事が、魔王軍に立ち向かう者たちの心をくじいてしまうのです」

行政官「だから、私は例え国中から後ろ指をさされようとも『勇者』を認定するわけにはいかない」

行政官「冒険者たちが戦い続けるには、勇者がいないことが重要なのです」

大司教「お主はお主なりに戦っておったのだな」

剣聖「俺は自分が恥ずかしい・・・お前が、そこまで深慮していたとは」

行政官「お二人は、誰が魔王を倒すか見当もつかないと仰いました。ならば、どうか私のサボタージュに協力してもらえないでしょうか」

行政官「どうか、どうか!お願いします!」

剣聖「頭をあげろ行政官、俺たちは仲間だ。どうして、仲間に頭を下げてまで乞う必要があろうか」

大司教「まあ、あくまでも儂は儂の目に従って仕事をするまでじゃ。しかし、結果として儂らが勇者を選び出すことができなかったとしても」

大司教「それはサボタージュとは言えまい?ちなみに、今この時をもって儂の目はより一層厳しいものとなったぞ」

行政官「・・・ありがとうございます!」

剣聖「だから、頭を下げるなと言っているだろうに」

剣聖「・・・お前は、俺の事を勇者と呼んでくれた。だが人知れず国に抗い続けていたお前こそ」

剣聖「勇者であると、俺は思う」

大司教「お、それはええのう」

大司教「どうじゃ行政官、お主も勇者候補生として儂らの面接を受けてみないか?」

行政官「まっさきに不可ですよ。私は、まだ何も成し得ていない」

剣聖「そうだったな・・・『成し得たものこそが勇者』。それがお前の勇者観だった」

大司教「さてお二人さん、儂はもう喉が渇いて仕方ないぞ。すぐに潤さねば、皺くちゃに枯れてしまいそうじゃ」

大司教「そろそろ審議を終えてもいいんじゃないか?」

剣聖「お前は、最初から皺くちゃだろうに」

大司教「なんじゃと!?」

剣聖「だが、喉を潤したいというのには賛成だ、行政官、そろそろ採決に移ろうではないか」

行政官「はい!それでは、みなさん採決に移りましょう」


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