60:1[saga]
2018/03/24(土) 22:49:31.29 ID:N9NZ/oAL0
51.
「こんばんは」
梓ちゃんはいつもより固い笑顔で私に手を振った。
「うん、来てくれてありがと」
「いえいえ。それより唯先輩、そんな格好じゃ風邪ひきますよ」
梓ちゃんは自分の上着を脱ごうとするけれど、私はそれを止めた。それじゃあ梓ちゃんが風邪をひいちゃう。
「じゃあどこかお店に入りましょうか。まだ9時半ですので、空いてるところ探しましょう」
私は梓ちゃんに手を引かれて歩き出した。
やっぱり君も不安なんだね。あったかい格好をしている君も、身体は震えていた。
「唯先輩だけじゃ、ないです。私も不安です。かけてきたものが、時間が、今までとは段違いですから」
ただの公立中学校の文化祭。去年の文化祭なんて、何があったかさえ覚えてない程度のイベント。
君がいる。去年との違いはこれくらい。
1人じゃない。去年との違いは、これだけだ。
「唯先輩、このレストランとかどう……ですか」
私は梓ちゃんを抱きしめた。私の震えは、彼女のそれとシンクロする。
「私を見つけてくれて、ありがとう」
君と出会った春。
君が私を見つけた4月。
私たちの‘華’は、今咲き誇る。
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