16:1[saga]
2018/03/20(火) 21:27:51.96 ID:NiGcwUvh0
14.
「私とお姉ちゃんはね、もともと小中高一貫の、有名な音楽大学の附属校に通ってたの。私もお姉ちゃんもピアノをやってたから。でも小学校を卒業するとき、お姉ちゃんのいじめが原因で転校することにしたんだ。私も一年遅れて、小学校卒業からお姉ちゃんが通ってるこの中学校に進学したの」
よく考えればあり得る話だ。その学校の中でも、唯先輩は飛び抜けていただろう。周囲からは疎まれるかは分からないが、少なくとも浮いていく。唯先輩は子どもっぽいから尚更、同級生は劣等感を感じたのだろう。
「お姉ちゃんはそれから、やっぱり人付き合いが苦手になっちゃって、この学校に入っても友達ができなかったみたい」
唯先輩は今もずっと音楽室にいる。私は唯先輩が他の人と喋っているのを、少ない時間だがまだ見たことがない。
ある日。小学校の卒業間近の最後の校内発表会の日、事件は起こったそうだ。
成績上位者だけが演奏をするその発表会で、唯先輩は初めての『発作』を体験した。
「現場は、私も見てたの。お姉ちゃんが演奏を始めた時、ステージのそこらじゅうで爆竹が破裂して、大パニックになった」
唯先輩はその場で気絶した。
それからピアノを弾くときには必ず、唯先輩は『発作』を起こす。ピアノ業界から姿を消したのは、その頃だったそうだ。
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