唯「奇跡も、魔法も、あるんだよ」
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37:1[saga]
2018/03/18(日) 20:59:34.62 ID:61wO2nel0
30.

「お姉ちゃん!」

憂は私の肩を揺らし、何度も名前を呼びかける。

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

「お姉ちゃん落ち着いて!」

視界が揺れる。意識も揺れる。
身体の震えが止まらない。

「唯ちゃん、大丈夫よ? 私は平気だから」

ムギちゃんは左腕を抑えている。でもすぐに、その傷も見えなくなる。

「唯ちゃんの傷も、今治してあげるね」

私の真っ赤な血が、魔法少女の服を汚していた。ムギちゃんは私に歩み寄ると、私の首元を優しく撫でた。

治癒魔法、だと思う。私の意識はだんだんと戻り、ひどい痙攣からも回復した。

「ごめんね、ムギちゃん……」

憂はとっさに剣を止め、寸前でムギちゃんを切るのを防いだという。残った敵も、私に噛み付いてきた敵も、全部憂が倒してくれたらしい。

「大丈夫よ。憂ちゃんが私を切るわけがないじゃない?」

「でもーー」

でも、そうじゃないんだよ、ムギちゃん。ムギちゃんも気づいてるよね。今回は運が良かったって。

もしかしたら、ムギちゃんの胴体だけを憂の前に転移した可能性もあった、ってことを。

怖かった。想像してしまった。

そうだ。戦うとはこういうことだ。一つの失敗が、私の失敗が、誰かを失わせるかもしれない。

ごめんね、泣きたいのはムギちゃんの方だよね。

私は朝になるまで、ずっと人気のない廃屋でうずくまっていた。



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