35:1[saga]
2018/03/18(日) 20:56:54.67 ID:61wO2nel0
「でもね、あずにゃん」
あずにゃんは、私に負けるのが悔しいんだ。私みたいに何も考えてないような人に才能だけで負けるのが。自分が上に立っている人に負けるのが。
すっごくいやな言い方をすると、だけれど。
「でもね、私はあずにゃんに勝ったことないよ?」
あずにゃんは不思議そうな顔をした。
「思い出してみて? 私、あずにゃんに負けてばっかりだよ」
例えば料理だって。もし仮に私に料理の才能があったとしても、私は今料理ができない。あずにゃんはとってもおいしいハンバーグを作れる。
例えば前の定期テストだって。私は澪ちゃんに直前に教えてもらったものがそのまま出てきただけだ。全く勉強してないのに赤点が回避できるなんてありえない。あれは私もあずにゃんも勉強しなかった、つまり澪ちゃんの勝ちで、私たちは引き分けだ。
「あずにゃんはね、1人で考えすぎて、頑張ろうとしすぎなんだよ。他の人に負けちゃっても別にいいし、もっと他の人に頼ってもいいんだよ? もっと私に甘えちゃいなよ」
にしし、と私は笑って見せた。あずにゃんもつられて笑ってくれる。
「……ほんとに」
あずにゃんは自分の席を立った。私に歩み寄る。
「私、唯の後輩になりたかったな……」
私は抱きついてきたあずにゃんを、ハンバーグが冷めちゃうまでできるだけ優しく抱きしめていた。
あずにゃんの心をあっためるために。
ハンバーグは、電子レンジがあればあったまるもんね。
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