【オリ】「君は、自分が壊れてしまうほど人を好きになった事があるかい?」
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1:名無しNIPPER
2018/03/09(金) 12:01:47.67 ID:uzy05gP60
※地の文メインです

その問いかけは、恋をした事がない俺には到底理解出来るものではなかった。しかし、 その言葉を発した彼の、憂いに満ちた瞳は、俺の焦燥感を掻き立てた。

「高校生の分際でそんな大それた恋愛を経験している訳ないでしょう」

その焦りを気取られぬよう、軽口を叩いたつもりだった。ところが彼は、そんな稚拙な心理はお見通しであるかの様にニヤリと笑うと、引き出しから何かを取り出す。

「文学少年なら一つくらい読んだことがあるだろう」

トン、と机の上に置かれたのは数冊の本。タイトルは『ロミオとジュリエット』、『ハムレット』……全て原文で書かれているため、後は読めない。だが、著者の綴りが違う事からシェイクスピアではないと思われる。

「戯曲、ですか?」

1冊手に取りパラパラとめくりながら尋ねる。

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2:名無しNIPPER[sage]
2018/03/09(金) 12:03:28.19 ID:uzy05gP60
「あぁ、その中でも悲劇、特に悲恋ものばかりだ」

彼は相変わらず笑っている。俺の返答が期待通りで嬉しいのだろうか。もしそうならかなり捻た性格だ。自分も人の事を言えないが。

「まぁ、ロミオとジュリエットくらいなら読んだ事はあります」
以下略 AAS



3:名無しNIPPER[sage]
2018/03/09(金) 12:04:36.31 ID:uzy05gP60
「望んでいるからと言って、狙って恋できるものでもないでしょう」

段々彼が何を言いたいのか解らなくなってきた。先程感じた焦りは勘違いだったのか。今の彼からは何の脅威も感じないし、彼の不敵な笑みは今や滑稽にすら映る。

「もちろん、狙ってするものではないさ。しかし、だ。事実は小説よりも奇なりと言うではないか。仮に君がその様な状況下に置かれたらどうするね?」
以下略 AAS



4:名無しNIPPER[sage]
2018/03/09(金) 12:06:04.68 ID:uzy05gP60
新学期が始まって、ようやくクラスメイトの顔を覚えられてきたかという頃、クラスに転校生がやってきた。

「よろしくお願いします」

凛とした声で挨拶し、肩ほどの髪を揺らしお辞儀をする。そんな彼女を見て、俺は、綺麗だ、と思った。しかし、それ以上の感情は湧き上がって来ず、第一印象で抱く感情なんてこんなものか、と少しがっかりした。一目惚れが出来たら、少なくともこの退屈な日常からは抜け出せたのかな、と端正な顔立ちを凝視した。
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[sage]
2018/03/09(金) 12:07:42.25 ID:uzy05gP60
渋々、と言った感じで立ち上がると、教室を出て行く。普段のHRの静寂を取り戻した教室で、彼女は手持ち無沙汰なのか、教卓の横でオロオロしている。
顔を左右に振る度に流れるミディアムくらいの黒髪が煌めいていた。数分で戻ってくると、自身の机の後ろにたった今運んできた机を置く。
その女生徒は俺の近くの席に、とはならず俺とはほぼ対極の位置に陣取る形となった。何だ、やっぱり劇的な事なんて何もないじゃないか、と平穏な日常を噛みしめた。

転校生が来る、という恐らく学生にとって五本の指に入るくらいに大きな出来事があっても、自分は変わらず日常から抜け出せない、その事実が、お前は酷くちっぽけなものだよ、と言われているようで強い嫌悪を覚えた。
以下略 AAS



6:名無しNIPPER[sage]
2018/03/09(金) 12:08:28.20 ID:uzy05gP60
図書館に通いだしてもうじき一ヶ月が経とうとしていた。
その頃には、気付くと恋愛小説を手にしている自分に驚くのも飽きてきていた。
最初に何気なく恋愛小説を手に取り、存外に面白かったので、たまに読んでいたが、俺の好きなジャンルはやはり推理小説で変わりなかった。
変わりなかったはずだのに、図書館についてまずは推理小説を、と考えながら手を伸ばしているのが恋愛小説だった。
初めて気付いた時には驚きを隠せず、思わず叫び声を上げ椅子からずり落ちていた。
以下略 AAS



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