【バンドリ】氷川日菜「あまざらしなおねーちゃん」
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79:名無しNIPPER[sage]
2018/03/01(木) 09:26:35.30 ID:ueeqel/10


 ※ ※ ※

 ……どうやら無事に私の記憶は戻ったようだ。それはとても喜ばしいことだと思う。しかし、思うところがあるので、もう書かないと決めた日記をあと1ページだけ。

 …………。感情が処理できない。

 まず最初に、私は今、日記になんていうことを書いていたんだと枕に顔を埋めたい気分である。

 読み返してみると、本当にひどい。ひどすぎる。

 悩みすぎだ。馬鹿なのではないかとその時の自分に言いたい。

 それに日菜に抱きしめられて涙を流すなんて……。1度ならまだいい。だが秋にも私は同じようなことをしているではないか。なんとも恥ずかしい。

 その上、つぐみさんにも多大なる迷惑をかけてしまっている。彼女に対する償いの方法が思いつかない。とりあえずこれから週に3日は必ず羽沢珈琲店に通おう。それで少しはつぐみさんにも報いることが出来ると思う。それ以上の良案は今は出てこなかった。

 それと、記憶に関してだが、学園の昇降口で日菜を待っていたことは覚えている。そこから次の記憶が病院のベッドだ。日菜にひどいことを言った。そのあとの記憶は全て残っている。

 理不尽ではないだろうか。

 記憶をなくしていた期間のことは、なくした記憶が戻ったら交換条件で消えるべきではないだろうか。記憶喪失の私と今の私は分けて考えられるものではないだろうか。それくらいは大目にみてくれないのだろうか。おかげで忘れたいことがたくさん増えた。穴があったら入りたい、とはまさに今の心境だろう。もういっそ開き直ってしまったほうがいいのかもしれない。

 …………

 そうだ、プラス思考だ。

 これもいい機会だ。もしまた同じような目に――いや、人生で2度も記憶などなくさないとは思うが――あった時に、この日記の存在を思い出して恥を重ねないように自分を戒めよう。

 自分の正直な気持ちを書こう。

 日菜は私に――(斜線で消されている)――私にとってまさに陽――(斜線で消されている)

 つぐみさんとまたセッションをするのもいいかもしれない。

 日菜は――(黒く塗りつぶされている)

 日菜は大切な妹だと思った。

 ……いざ書こうと思ってもなかなか上手くいかないものだ。結局こんなことしか書けなかった。好きなことを好きって言うのはこんなに難しかったかしら。

 まぁいい。

 恐らく、またこんな目に遭ってもどうせ日菜のことだから、私に付きっきりで看病をするでしょう。それに甘えてしまうのは非常に癪ではあるけれど、その存在が私にとって大きな助けになっていることは確かだ。

『絶対に味方でいてくれる人が氷川紗夜の隣にいつもいます』

 この1文だけでいい。色々と切羽詰まった状態の私でもきっと察してくれるだろう、きっと。

 ともあれ、これで本当の本当に日記は終わりだ。

 これは戒めだから、私が日常的に目に触れるような場所へ隠しておこう。

 どこがいいだろうか。私のことだから……何かがあったらきっとすぐにギターに触れるでしょう。しばらく持ち運ぶ予定のないアコースティックギターのケースにでもしまっておこう。

 これにて私の――氷川紗夜の日記は終わりだ。また私が氷川紗夜でなくなる時があれば、この日記を見つけて、大切な妹への感謝を思い出せますように。


 了


――――――――――――


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