【バンドリ】氷川日菜「あまざらしなおねーちゃん」
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61:名無しNIPPER[sage]
2018/03/01(木) 09:17:07.08 ID:ueeqel/10

紗夜(がらんどうの観客席に目をやる。ステージとそことを分ける最前列の柵の前に5人が立っていた)

紗夜(私は左からその人物を確認する)

紗夜(一番左にいるのは、確か同じクラスの白金燐子だ。喋っているところをまったく見たことがなかった)

紗夜(彼女の隣にはかなり背丈の小さな女の子がいた。中学生だろうか、自分とは少し歳が離れているように見えた)

紗夜(並びの真ん中にいる人物は腕を組み、まるで自分を試すかのような視線を送ってきていた。力強い目だ)

紗夜(その隣には今風な身なりをした女性が心配そうな面持ちでいた。ギャル、というのだろうか、そんな格好と心配そうな表情に少しギャップがあった)

紗夜(そして右端には日菜がいた。日菜は自分と目が合ったのが分かったのか、明るい表情で1つ頷いて見せた)

紗夜(「おねーちゃんなら大丈夫だよ!」と背中を押された気がした)

紗夜(5人に視線を巡らせたあと、会場の全体を見回す)

紗夜(このライブハウスで演奏したことはなかった。初めて立つはずのステージだ)

紗夜(しかし、見覚えがあるような気がして、何か頭の片隅に引っかかるものがあった)

紗夜(それのせいか、不満と焦燥、驚愕、決意、そして安穏など、まぜこぜになったいくつもの感情が胸中に渦巻いている)

紗夜(……怖い)

紗夜(得体のしれないそれらに恐怖心を煽られる。小さく手が震える)

紗夜(でも……日菜が背を押してくれた)

紗夜(右隣へ視線を巡らせる。一歩下がったその位置にいる羽沢さんと目が合う)

紗夜(彼女も日菜と同じように力強く頷いてくれた)

紗夜(それにも背を押された)

紗夜「……歌います」

紗夜(口から漏れた小さな呟きをマイクが拾って会場全体に響かせる)

紗夜(もっと言うことがあった。いろいろな言葉を考えて、いろいろな感情を吐き出すつもりだった)

紗夜(しかし、それだけしか出せなかった)

紗夜(コードを押さえる。手の震えはもう止まっていた)

紗夜(ピックを握った手で、大きく最初の音をかき鳴らした。羽沢さんのキーボードも途中からそれに交わってくる)

紗夜(……大丈夫、ちゃんと弾ける。歌える)

紗夜(私はそう思い、目を瞑って歌詞を紡ぎだす)



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