5: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/03/01(木) 01:55:56.99 ID:oJjJsh0zo
「む、う。それでも、腰が痛むっていうのは想像以上にしんどいな……」
そうして、今はその日の午後である。
P氏は自宅のベッドの上で独りごちた。
そりゃあ彼だって仕事中は早く帰って眠りたいと思ってはいた。
が、早退してもやることが無い。
いや、正確にはやろうと思っても何もできない。
立ち上がることも屈むことも、まして歩くことすらままならぬ。
P氏は唸った。理由は単純、腰が痛んでしようがない。
例えるならばその痛みは、高圧の電流が体中を駆け巡るかのような。
だが、これではまるで恋である。
生憎とP氏はぎっくり腰に恋慕の情は抱いていない。
もしくは切り分けられた脊髄を、力任せに背骨ごと叩き出されるような。
こちらも何かに例えるなら、ダルマ落としのダルマになったような気分。
少しでも腰を動かすたび、彼を支えるドーナツ体は容赦なくハンマーによって弾き飛ばされていくのだった。
つまりはそれほどの痛みが襲うのである。
この辛さは身をもって経験してみなければ読者諸氏にも分からぬだろう。
それは人類が二足歩行を始めた時から逃れられないカルマでもある。
ピン! と伸びた背筋を得るために我らは永遠に解決されない腰への負担を
生まれながらにして強いられながら生きるのだ。
どのような動作にもたえず付きまとう腰痛は確実に人間をダメにする。
ダメになってしまった人間は次第にダメ人間へと変貌する。
つまるところベッドに寝ころんだが最後、かれこれ二時間近くは
横になったままのP氏は名実ともに堂々たるダメ人間だと言えるハズだ。
まず、間違いなく。
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