131:名無しNIPPER[saga]
2018/06/24(日) 01:20:45.31 ID:UcaOh9Zb0
しばらく沈黙が流れたのち,犬井さんは肩を落とした.
「この話題はお主の反応を見るにあまり受けてないのじゃな.ざんねんな結果になってしまった」
「え?」
「ちなみにこれ,昨年流行ったAI LOVE HUMANという映画でのヒロインの台詞なのじゃ.いままで,最高の反応を引き出していただけに,この選択のミスは
痛いの.ただお主,すこしばかり世俗に疎いのじゃ」
犬井さんは,人差し指の腹で僕の額をつんと突いた.
「ちょ,ちょっと待ってください.どういうことですか,僕には,なにがなんだがさっぱりで」
『はい,対象者が異常を認知したことを確認したため,実験シューリョー.I-TAKEKOは即時撤収しなさい.最後にばらさなければ,セカンドステージもあった
のに.最後まで諦めないことねI-TAKEKO』
倉庫のどこかにスピーカーがあるのだろうか,どこか気の強そうな印象を受ける音声が倉庫内に鳴り響く.
犬井さんが失態じゃ…失態じゃ…と頭を抱えて,勝手口から出ていく.
狼狽していた僕は彼女を追いかけようとするが,勝手口の扉はロックされているのか,開かない.
『あんたはそこにいなさいよ.男仁からの指示があったんでしょ』
その指摘は半分正しいが,半分間違っている.
特に,スピーカーの向こうにいるやつに,指図されることじゃない!
「おい.犬井さんをどこにやった?」
『あんたには関係がない.ちなみにこれ,男仁も了承済みの話だから.文句は男仁に言いなさい.あと,このバイトで高い給料出てるのは私のおかげだから,
感謝はなさいよね』
.
「僕を使って,無断で実験をしていたんだな」
『そう,TAKEKO(剛子)がロボットだって知っていたら,意味がないもの.でも,実際に話していたあんたも違和感がなかったのよね?』
「違和感ならあった!変な口調だし!」
『それが狙いなのよ.会話はわざと不完全な状態にしたほうが見分けにくいと思ってね.自分でも驚くくらい,素晴らしい案だったわ.今度はノムリッシュに
でもしてみようかしら』
冷静な口調が逆に癪にさわった.
「大体お前は一体何なんだよ.何者だ?」
『港湾管理者がTAKEKOであることは事実よ.私はそれのメンテナンスと管理をしている開発者といったところかしら.ロボットは背中の痒いところは,アーム
を伸ばせば掻くことはできるけれど,自分の中身を掻っ捌いて脳を取り出して自分の悪いところを見ることはできないの』
スピーカー向こうにいる相手はまったく悪びれる様子もなく,あっさりと白状した
それもご丁寧な説明を加えて.
さて,僕はどうしようか.
1 怒りに任せ,ここから出ていく.バイトなんて知ったことか.
2 男仁さんを待つ.その間,この相手とは不快だから喋らない.
3 男仁さんを待つ.その間,この相手から事情を聴こう.
安価直下
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