112:名無しNIPPER[saga]
2018/03/24(土) 02:33:34.93 ID:RQ9IlSOL0
瞬間,男仁さんの周りの温度が数度下がった気がした.
彼の全身の筋肉が硬直し,強張る.弁当を傍らにおいて両腕が自由になり,脚が土を踏みしめる.
敵意というには婉曲に過ぎて憚れるほどの,殺意が僕に向けられている.
「百地さん,誰からその名前を聞きました.そして,なぜ,今会話にだしたのです?」
「さ,猿山さんが呟いたのを見たんです.それで,不思議に思って」
「呟いたのを見た…ああ,そのPAIで読唇したのですね.なるほど部分的には憎いほどに高性能に,不正にカスタマイズされている」
男仁さんがゆっくりと手をこちらへ伸ばす.視界が埋まるほど,大きな掌が広がっていく.
触れる直前で,PAIが耳障りな警告音を発した.
対暴漢用のシステムでこの状態でもし,PAIに触れれば,強力な光を前面に発射し,視界を奪うだろう.
男仁さんはそこで手を止めた.
「確かに,彼女はそう言いました.ですが,それを部外者が不正に入手して,理解するのはまずいのです.
また,他にどんな機能がついているのか,分かったものではありません.それはきっと貴方も同じことです,そうでなければこんな迂闊な発言はしないでしょう,
これからの貴方の安全を守るために言います.この仕事の最中は,私にそれを預けて下さい」
男仁さんは,話している間,つとめて冷静であろうとしているようだった.
嘘をついている様子は見受けられない,
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