彼は普通の人でした
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14:名無しNIPPER[saga]
2018/02/28(水) 00:42:58.72 ID:Nss/++tl0
そして五部が始まります。いよいよ後半戦といった感じで、ファンの方たちも一日中会場にいた疲れが見える人が多くなった気がします。

ひろたんは相も変わらずループしてくれています。今日だけで、何度顔を合わせたか数えられないくらいです。下手な親戚に一生で会うより、回数で言えば多いのかもしれません。

電車さんも剥がし作業に慣れてきたようで、スムーズに事を進めていきます。相手に粘らせ過ぎず、苛立たせもせず、かつ規定時間で合図をするというのは実は難しいものなのですが、彼はしっかりとその良きところで声をかけているようです。

「10枚でーす」

そんな中、ブースの入り口付近に立っているスタッフから声があがりました。

握手券というのは複数枚を同時に出せば、その分一回当たりの接触時間を長くできるのです。10枚出せば、一回の握手で約10倍の時間を話せるということです。

現れたのは。

……うっ、タケシタです。彼はいつも高圧的に、説教をするかのように私に話を投げてきます。

「久しぶりだな」

「お久しぶりです」

いくら嫌な相手でも、これが私の仕事なのです。彼がここで使ってくれた10枚分の握手代が、巡りに巡って私のお給料になるのです。

そう思うと、作り笑顔だってお手の物です。アイドルは表情筋を自在に操ってナンボなのです。

「この間の歌番組、音外してただろ。ほら、××に出てたとき。レッスン足りないんじゃないの?」

ほらきた。実際、あの歌は口パクなんですが。そんなことを本人から暴露するわけにもいかなくて、反省したふりをします。しゅんとした表情で「すみません、練習不足で……」と深刻そうに。

「お前、いつもそうじゃん」

いつもそうなのはタケシタの方こそなのですが。口が裂けてもそんなことは言えません。


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