4:名無しNIPPER[saga]
2018/02/11(日) 12:27:59.93 ID:IaGgYaLS0
「本物の化け物の力だと?」
執務室に居る4人の艦娘。長門、榛名、天龍、龍田は少なからず困惑していた。新しい提督が着任するという情報が入り、真っ先に挙がったのが『排除』だった。榛名に執務室に案内させ、そこで脅せば逃げ帰るだろうと思っていた。
やって来たのは、前任の小太りの男とは比較すらできない程屈強な男だった。しかしどんなに屈強であろうが人間は人間。だが、この男は4人の予想を遥かに超えていた。戦艦2人と軽巡2人の殺気を一身に受けても、怯えるどころか不敵に笑う。挙句艦娘に向かって化け物には見えないと……。
「馬鹿馬鹿しい……貴様は人間ではないと言うのか?」
「ククッ……見せてやるよ」
そう言うと一心はおもむろに腕を前に出す。
「何だその手は?」
「腕相撲だよ。机はお前がぶっ壊したから、空中腕相撲だがな」
「馬鹿馬鹿しい。勝負になるとでも思っているのか」
「思ってねえよ。だからハンデをやる……俺は人差し指1本で相手してやるよ」
漫画やアニメ等の「怒り」を表現する方法として「ブチッ」という何かがキレた音というものがある。勿論創作においてキャラクターが「キレた」のを読者に分かりやすく伝える為の表現方に過ぎない為、現実にはいくらキレてもそんな音が聞こえることはない。もし聞こえたら病院に行った方がいいだろう。
しかし、この場に居る榛名、天龍、龍田は確かに聞いたのだ。ビッグ7にも数えられた戦艦長門が本気で「キレた音」を。
「……嘗めるなよ人間風情が。良いだろう、その腕諸共貴様の思い上がりをへし折ってくれる」
女性とは思えないドスの利いた低い声。最早空間が歪んで見える程の濃密な殺気を放出しながら、長門は全力で一心の人差し指を握る。
(なに!?)
長門は心底驚愕した。鋼鉄すら容易に握り潰せる自分が全力で握っても、潰れるどころか骨が軋む様子すらない。まさか、本当にこの男は化け物だと言うのだろうか。
「榛名、開始の合図頼む」
「え、あっ……はい」
「好きなタイミングでいいぞ」
本気の長門を前に、この場に居る艦娘4名が感じ取れるのは圧倒的な余裕である。その余裕を感じ取った4名は困惑する。自分達は艦娘だ、人智を超越した力を持つ艦娘のはずだ。だからこそ、その力を利用する人間が存在することも、その力を畏怖して化け物と呼ぶ人間が存在することも、心のどこかでは仕方ないと思っていた部分もあった。
だがこの男、新任の提督としてやってきたこの男からは、艦娘に対する畏怖など一切感じられない。寧ろ、自分の方が強者だと信じて疑っていない。
「で、では……始め!」
それは刹那の出来事だった。榛名が開始の合図したその直後、戦艦長門は宙を舞った。一心の超常的筋力で腕を倒された長門は、そのあまりの勢いで体が浮き上がり床に叩き付けられた。
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