8: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2018/02/09(金) 23:51:32.25 ID:DwZz2Xwp0
暗い。冷たい。……そして、静かだ。
1年前も2年前も同じ、この海の中で漂いながら、そう思う。
2月の海は冷たくて、水中での保温性の高いウェットスーツを着ていても、その冷たさを主張してくる。
暗くて、冷たくて、ほとんど音の聴こえない、真冬の海の中。
──落ち着く。
程なくして、ゆっくりと海面へと登って行く。
ざばっと──水上に顔を出した、私の目に飛び込んできたのは、
鞠莉「……真冬なのに寒くないの?」
朝日を反射する、金色の髪と瞳。
果南「寒いけど……それがいいんだよ」
鞠莉「そういうもんなんだ……」
果南「そういうもんなんだよ」
鞠莉「……最後に潜っておくのも悪くないかも」
──最後。
果南「当分は潜る機会もなくなるだろうしね」
私たちはやっと、再び3人に戻ることが出来たのに、年度が明けるころには全員この内浦を去る。
鞠莉「果南」
果南「なに?」
鞠莉「今年のBirthday... どうする?」
果南「……普通でいいよ」
鞠莉「船上パーティ?」
果南「……普通がいいよ」
鞠莉「……そうね」
船上パーティには憧れるけど、今は普通でいい。
今はこの変わらないと思っていた時間を、抱きしめて居たいから。
果南「……鞠莉の部屋なら9人入るよね」
鞠莉「ええ、もちろん」
* * *
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