319:名無しNIPPER[saga]
2018/08/19(日) 03:52:29.34 ID:3FrzmiYZ0
「それで、好きっていう気持ちは、なかでも特別なものだと思う。
……だって、そうでしょ? 自分の見た──錯覚した幻を、さらに美化してるんだから」
「……」
「こんな話して、ごめんね。……私、シノちゃんの様子見てくるよ」
そう言って部室から出ていこうとする胡依先輩を、俺は呼び止める。
「……東雲さんのこと、好きなんですよね?」
訊いてはいけないことだと思いつつも、訊かずにはいられない。
ふっと、つまらなさげなため息が耳をかすめる。
「好きだよ」
でも──、と彼女が続けた言葉は小さすぎて、うまく聞き取れなかった。
その代わりにドアの閉まる音だけが、やけに鮮明に聞こえる。
寂しさを孕んだ、けれど、ひどく冷たい響きだった。
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