36: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/02/09(金) 00:09:01.28 ID:Ui02l9zqo
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「だから私は、自分の意志でここにいます。私自身が
そんな舞台の上に立ちたいから――アイドルになりたいから、ここにいます!」
――気づけば、彼女はこの場にいる全員の視線を自分自身に引きつけていた。
……なんてことはない、ただの少女の語りなのに……恵美は泣き、俺は高鳴り、最上静香は震えていた。
友人の願いを叶えるためでも、大人の期待に応えるためでもなく、
ただ純粋に自分の夢を叶える為、少女が、紛れも無い、アイドルの原石が俺の目の前に立っている。
そうして、そんな彼女に最も心動かされていたのは他でもない――。
「あ……や、やだ。私、どうしちゃって……す、すみません。なんで? な、涙が……もう……!」
弱さをさらけ出した少女は無垢な可能性の塊で……
その姿は、見る者に多大なる期待を抱かせるには十分すぎるほど美しい。
きっと、彼女はこれからどんどん傷つくことだろう。
だが、それで彼女の輝きが曇ることは無いハズだ。
そう思わせるだけの強さを持つ、真新しくできた傷口は朝焼けにも似た血潮の輝きを強く放ち――。
「プロデューサー」
気づけば、千早がここへ戻っていた。
振り返った俺の顔を見た彼女は始め驚いて……それからやれやれといった様子で肩をすくめると、
大人の癖にみっともなく涙ぐんでいる俺に向かって言ったんだ。
「悩む必要、あるんですか?」
「……律子にはまた怒られちゃうな」
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