19: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/02/08(木) 23:38:14.16 ID:eKF+OPoOo
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オーディションが終われば、次にしなくちゃいけないのが誰を合格にするか決めることだ。
基本はプロデューサーである俺と律子に決定権があるワケだが、今回は特別に、千早にも一人分の選択権があった。
「それで千早は矢吹さんか」
「はい。……確かに、彼女の歌はお世辞にも上手いとは言えませんが――」
「いやいやいや、上手いとか下手とか以前の問題よ。アレは。壊れたマイクじゃないんだから……」
「でも律子。今日オーディションを受けた人の中では彼女が一番歌を理解していたわ」
律子の言う壊れたマイクのように音程も音量も滅茶苦茶な、要するに"音痴"な矢吹さんだったが、
彼女は自分の歌が下手なことに対するある種の開き直りを感じさせるほどの"楽しさ"を表現して見せた。
それは審査する俺たちに、心の中で思わず「頑張れ」と応援させてしまうほどの強い魅力を放っていて。
「まあ彼女が歌ってる姿はのびのびと……随分楽しそうだったな」
「プロデューサーまでそうやって千早の肩を持つ。……ふん! どうせ私はいつでも少数派、悪者ですよー」
「律子、こんなことぐらいで拗ねるなよ……。だけど楽しそうに歌うって言うなら、ほら、千早、あの人だっていたじゃないか」
「もしかして、プロデューサーが言うのは北上さんのことでしょうか? ……和三盆の」
「そうその人だ、和三盆の!」
「ちょおっと待ったプロデューサー殿。彼女なら私がまず推薦します。
……ちょっと変わってる人だけど、歌もダンスも今日見た中じゃ一番の出来栄えでしたから」
言って、律子は本日最も高い成績を出した女性のプロフィールを手に取った。
「それに見た目も美人だし」
「子供っぽい愛嬌のある美人か……確かに、これは売れる匂いがする!」
ちなみにこれは経験論。我がプロダクションにはちょっとお茶目な大人の女性、
ドラマにグラビアに大活躍の三浦あずささんというお方がおりましてねっ!
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