北条加蓮「運命的、あるいは作為的」
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41: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2018/02/08(木) 02:14:23.94 ID:1k4n5Mtx0



そのあとで、一応念のためにプロデューサーが家まで送って行ってくれることになった。

アタシはそこまでしなくていいと言ったのだけれど、プロデューサーが頑として譲らず、根負けしたのだった。

「なんか北条さん、キャラ変わったよね」

車の外を流れる景色をぼーっと眺めていたところ、声をかけられた。

「……え、キャラ?」

「ほら、最初にプロデューサーとして会った日、覚えてる? すごくトゲトゲしてたように思うから」

「あー……。うん、そうだね。あのときは正直、半信半疑だったんだよね」

「何が?」

「アタシみたいなのが、憧れのアイドルになれるってこと自体が」

「それで、あんな感じだったんだ」

「うん。だってあんな有様だったからさ。ここで戦力外通告を言い渡されるかもしれないー、そうでないにしても途中で付き合い切れなくなって匙を投げられるだろうなぁ、って思ってたんだ。だから、口も態度も悪くなっちゃって」

「でも、違った……と」

「そう。何もかもダメダメなアタシとちゃんと向き合ってくれて、ゆっくりでも一緒に進もうとしてくれたの、プロデューサーが初めてだったんだよね。学校でも病院でもアタシができないことは誰かしらが『やってあげるよー』って手を貸してくれてさ。たぶん、そっちの方が楽なんだよね。アタシに何かをおっかなびっくりやらせるより。だから、アタシが何かをできるようになるまで付き合ってもらえるなんて考えてもみなかったし。この人なら信用してもいいのかなぁ、なんて」

「……」

「もう自棄になったり、何かを諦めたりするの、やめようと思えた」

「……」

「ねぇ、もしかして泣いてる?」

「泣いてない」

「泣いてるじゃん」

「泣いてないって」

「アタシが気を失ってた時も泣いてたんだよね」

「なんでそれを」

「やっぱり泣いてたんだ」

「あ」

「あはは、意外と泣き虫なんだね」

からかってやると、プロデューサーは拗ねたフリをする。

さっきの言葉に嘘偽りはなく、全部本心だ。

それがどれくらい伝わっているかはわからないが、とりあえずはデビューするその日まで、やれるだけやってみるつもりだ。



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