2:羽根ペン ◆u/aQt5mEvU[saga sage]
2018/02/07(水) 01:01:23.54 ID:lmMr3uKB0
アーレ歴248年花の月22日
今日から私は日記をつけることにした。理由としては覚えきれないことを多く遺しておくためだ。と言うのも、私は明日から旅に出るつもりだからだ。
そんな日記なので初めに旅に出る理由でも書いておこう。
私は今年の花の月の一番初めに騎士団を辞した。理由は様々だが、とりあえず辞めた。しかし、そこからがかなり問題だったのだ。騎士団をやめ、一つの所に落ち着くことで様々な所から色々な話が舞い込んできたのだ。
今思ったのだが、さすがにこれは後々まで覚えていそうだな。
まあ、毎日何かしら話が舞い込んでくるのが実に辟易とするもので、中には少しムッとするものもあった。と言うわけで、そういう雑事から逃げようと思った次第である。
駄目だ。書くのが難しい。
ひとつ、書いておかないといけない事がある。
雑事から逃げ出すことは単なるきっかけにすぎないこと。私は元々世界の色々な景色を見て回りたかった。その願望があったからこそ、国中を回る騎士団に入団したということ。雑事があってもなくても旅に出る可能性が高かったということ。
旅に出る理由等はこれくらいでいいだろうか。
因みに、旅に出る旨を伝えた人は長年私に仕えてくれ、屋敷を守ってくれたエリ一人だけだ。
エリのことも書いておこう。彼女は私の幼馴染で、田舎から出て騎士団に入団することになった私を追いかけてきた人である。最初私は寮暮らしだったので、彼女は寮の食堂に入って色々な手伝いをしていた。時々、私の寮室に突撃してきたことはここに書いておいてやろう。そして、私がそれなりの地位になって寮を出て屋敷を建てることになった時、彼女は当然のように屋敷の使用人のトップの地位に居座った。
私が戦争に出向くときでも魔物討伐に出向くときでも、彼女はただ「行ってらっしゃいませ。帰還をお待ちしております」と言ってくれた。この言葉がどれほどうれしかったことか、これは筆舌に尽くしがたい。
そして、今回の旅の事を話した時はただ「そうですか」と言っていた。長い旅になり、エリを連れていけない事。それを伝えた時も「そうですか」とだけ言った。私はその言葉の裏にある彼女の感情を推察することはできても、知ることはできない。彼女は「行かないでくれ」とも「無理にでも連れて行ってくれ」とも言わなかった。今は、いや、これからもそれに甘えて、旅に出ようと思う。
せめてもの贐として家や財産のすべては彼女に譲渡することにした。賢い彼女のことだ、うまく活用してくれるだろう。
明日、朝日が昇ってから出発だ。今日は早めに寝ることにする。
毎日日記を書くかはわからないが、最初の内は頻繁に書こうとは思う。
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