46:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:04:45.79 ID:kLIsZwOI0
近づく、すぐ振り返り視線をそらす前に言う
「何よ」
「ファッ!?」
「早く言っちゃいなさいよ、静かにしなきゃ見つかっちゃうんだし」
「お前の事が」
47:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:05:28.53 ID:kLIsZwOI0
お前の事が」
「うん」
「お前の事が好きだっオォン!」
突然焦げ茶色の猫が突撃してきた!?
48:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:06:01.28 ID:kLIsZwOI0
猫たちの騒ぐ声が一瞬聞こえ、BNKRGは跳ね飛ばされたまま看板の隙間から落ちる。
死ぬ、そう思った瞬間脚で受け身をとれた。いや、これは徐々に猫に近づいているのかもしれない。
玄関にゴミが散乱している廃ビルだったのも救いだった。
49:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:06:28.54 ID:kLIsZwOI0
だが着地の瞬間足を滑らせてしまった。人間がこちらを向いた。音で気づいたのだ。
逃げなければ。そう思おうにもなかなか足が滑って動かない。
網がかぶせられた。
50:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:06:57.12 ID:kLIsZwOI0
「お前はそっち押さえろ!」
「人間に勝てるわけないだろ!」
次々と人間がきた。網の上から固いものがぶち当たる。蹴りつけられた、気づいたのは視界が開けた一瞬後だ。
暴れつつ抵抗した、しかし地の力が違いすぎる。
51:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:07:35.44 ID:kLIsZwOI0
ハッとした。愛護センターの人の向こう側にKNNが見えた。
家から出るところだ。すみませんの言葉と共に何度も頭を下げていた。
助けて!何度も叫ぶが、こちらからは猫の鳴き声が響くばかりで届かない。
まさか、私を探しに?私がいつまで経っても帰らないことに業を煮やしたのか?
拉致されたのではないかと近所に聞きこんでいるのかもしれない。いつもなら勤務時間なのに?欠勤……?
52:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:08:49.65 ID:kLIsZwOI0
落胆する声が震えた。顎から、いや頬から一滴落ちたように見えた。
それと同時に視界が遮られた。
暴れるのをやめ遠くを見ていたので、袋をかぶせられたのだ。
ダメだ。ここで捕まったら誰にも謝れない。このまま死ぬわけにはいかない。
53:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:09:29.83 ID:kLIsZwOI0
「保健所では貰い手が見つからない犬猫は処分されるのは知ってるよね?PSR。」
「処分の方法はガス室に入れての処刑だってこの前テレビで見たんだけどさ、ガス室では値が張る一酸化炭素を使わず二酸化炭素を使ってるんだって。知ってた?」
「へぇー。燃えた時に出るあの?でも安楽死なら一酸化炭素の方がいいと思うんだけど…」
「自然界にCO2なら普通に存在するし、それに一酸化炭素だと割と簡単に人間でも死人出て危険だと思うんだけどね」
「そうそう、二酸化炭素は酸素とかより重くて、下にいると苦しくなるでしょ?だから猫たちは必死に弱った奴らを蹴落として上に行こうとしてるんだって」
54:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:10:32.44 ID:kLIsZwOI0
死の受容の段階は5つに分かれており、そのプロセスで不治の病の患者たちはいくつかの段階を経て最終的には受容へと至る。
聡明なPSRからそう聞かされた時にはなんのこっちゃと右から左へ受け流してそのまま忘れていたが、今更になって思い出しBNKRGは納得した。
愛護センターに着いて何日が経っただろうか。今更暴れてもどうにもならないだろうとBNKRGは暴れるのをやめた。
どうせ貰い手は来ず、死ぬのだ。ならばこのまま暴れても仕方ない。
ただ自分の最後を看取ってもらえない寂しさで、死を想ってBNKRGは目を閉じた。
55:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:11:25.99 ID:kLIsZwOI0
それでもいいと思った。
今まで好き勝手猫を殺して食べてきたのだ。当然の報いだ。
虫のいいようだが生きたいと思った。罪を償いたいと思った。
でもそれも過ぎた願いだ。
BNKRGはこの薄暗い檻で死んでいくのだ。
56:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:12:48.19 ID:kLIsZwOI0
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