速水奏「夢で逢えたら」
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/02(金) 18:14:34.05 ID:tTi/N0cm0
「遅くなっちゃった……」

 今日のラジオの収録はかなり時間がかかってしまった。事務所が開いていると良いのだが。

 忘れ物を取りに向かう道のりを、速水奏は早足気味に歩いていた。

 「人生はチョコレートの箱、開けてみるまで中身は分からない」と言うのは奏の好きな映画の台詞だったが、正に今がその通りだ。退屈な日常の蓋を開けてみればジェットコースターの様な日々。

 ついこの前まで只の女子高生だった自分が、あれよあれよと言う間にアイドルとなり今や超のつく人気ユニット「LiPPS」のリーダーだ。

 悩みを挙げるとすれば、ジェットコースターに振り落とされない様にするのが中々ハードだと言う事だろうか。

 これでもそれなりに努力は欠かしていないつもりではある。

 「キャラ」と言うほどでも無いが、人前に出てその目を引くだけのパフォーマンス、立ち居振る舞い、それらを演じるために必要な条件は全てクリアしておかなくては最高のものを観客に届ける事は出来ない。

 そういうのは嫌いではないし、怠るつもりは無いが、時々一息入れたくなる時だってある。

 特にここの所はあまり休む間も無かった気がする。疲れは溜まっているのだろう。

 こんな時に――。

 ふっと、自分をジェットコースターの渦中に放り込んだ人間の顔が浮かんだ。

 しばらく顔を見ていない日が続いている。

 向こうはLiPPS全員の面倒を見ねばならず、こちらはソロでの仕事も増えている最中だ。今日みたいに現場が近い日などは一人で入って直帰と言う事も多くなった。

 勿論ラインやメールで連絡事項の遣り取りはしているが、直接会って話すのはまた違う。

 ――どう思っても、詮無い事か。

 仕方が無い。お互いに仕事なのだ。

 まさかリーダーである自分がわがままを言う訳にもいかないだろう。



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