モバP「アイドルにサスペンスドラマの犯人役のオファーだって!?」
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109: ◆P4gW9oKees
2018/02/25(日) 22:01:47.83 ID:jwLgawr10
「アーニャちゃん、一人で衣装室に戻るのは嫌、よね」

「…はい」

アーニャちゃんも私の言葉全てを信じてくれてはいないのでしょう。

それなら、と私はアーニャちゃんに何にも触れないようにだけ注意をして、作業に取り掛かります。

部屋の中を見渡せば、そこには様々な箱や小道具などが乱雑に置かれていました。

これらのものを使えば、この人が荷物を運んでいる最中に、バランスを崩して倒れ込んだように見せかけられるはず。

やるからには徹底的にやらなければ。
出来るだけ証拠を残さないよう、細心の注意を払う。


まず私は自分の両手を見た。
撮影時の衣装をそのまま着ているため、今私は手袋をしている。
このまま作業をすれば、指紋はつかないかもしれないが、埃を被っているこれら道具の汚れが手袋についてしまう。
残念ながら、軍手のようなものも部屋の中には見当たらなかった。

そこで私は手袋を裏返し、左右を逆にしてはめ直した。
これなら、汚れがつくのは手袋の内側になる。
いずれはバレてしまうけれど、それは恐らく事件が事故と片付いた後になるでしょう。

次に、ドラム式の延長コードを持ってきて部屋の隅にあるコンセントに差し込み、倒れているスタッフさんの足元の近くを通して部屋の反対側に放置。
そしてそのコードを一度引っ張り、プラグの差し込みを緩くしておく。
こうすれば、あたかもこのコードに引っかかって倒れたように見えるはず。

しかしこれだけでは、何もしていないスタッフさんが急にコードに足を引っ掛け倒れたように見える。
それではあまりにも不自然。

なので次はプラスチックのカゴにさまざまな小道具を入れていく。
これを運んでいる最中にバランスを崩してコードを踏みつけ、足を引っ掛けたように見せかける。

私は、物を片付けている最中だということをよりリアルに見せかけるため、ある程度一貫性のある小道具をカゴに詰めていく。
その結果、私がギリギリ持てる程度にまで重くなってしまったけれど、そっちの方が重さでバランスを崩したと思わせることができる。

そして、スタッフさんの足元に立ってカゴを持ち上げ、落とす。
落ちたカゴは横倒しになり、中の物もあたりに散らばった。

これで「スタッフさんが倉庫の物を片付けている最中、重さでバランスを崩し、コードに足を引っ掛け転倒した」という現場を作り出すことができた。

ここで私はふと自分の両手を見てみた。
思っていた通り、手袋の内側は多少汚れてしまっている。
そして私ははっと気づいた。

スタッフさんがこの部屋で作業をしていたのなら、スタッフさんの手や服も汚れていなければおかしい。
私は、散らばった道具の中から出来るだけ汚れがつきそうなものを選び、スタッフさんの手やシャツやズボンにその汚れをつけていく。

これで完璧でしょう。

あまり時間は残っていない。
私はアーニャちゃんの衣装についた汚れも、できるだけ手で払い、私の衣装についた汚れは、アーニャちゃんに私の手袋をはめさせて、払ってもらった。

最後に裏返しにしていた手袋を元に戻してはめ直せばおしまい。

私たちは倉庫の外に誰もいないことを確認すると、素早く倉庫から出た。

と、ここで私は倉庫の扉に貼ってある貼り紙を改めて見た。
これは恐らくあのスタッフさんが私たちを騙すために貼ったもので間違いないでしょう。

私はテープの剥がし残しがないように、丁寧にその貼り紙を剥がした。
手袋をはめたままでは剥がしにくかったが、こんなものに指紋を残すわけにはいかない。

私は急ぎつつ、焦らないように丁寧に剥がしていった。
四角をテープで貼り付けているだけだったため、紙と扉の間に指を入れれば、手袋をはめながらでもなんとか剥がすことができた。

後は、衣装部屋の近くにあるゴミ箱に捨ててしまえばいい。

これで、私の隠蔽は完璧に終わった。

そう。「完璧」に終わってしまったのだった……。


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