21: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/01/28(日) 13:12:40.76 ID:z2Y7iDdr0
「でも……」
「えっと?」
言葉を選びながら、おみくじを返すプロデューサーのその手は、なんだか魔法をかけるように見えました。
「待人はすでにその人に会っているからじゃないでしょうか」
「よろこびごとは遅くても来るから希望を捨てるなって意味かもしれませんね」
「……」
プロデューサーの言葉に私の世界が変わります。
何気ない一言なのに、こんなにもありふれているのに、それは魔法の言葉でした。
たった一振りで、「運」を「福」に変えてしまうような、そんなステキなモノ。
「心の持ちようによりて幸せとも不幸せともなる……というのはどうでしょう?」
「そっか。そうですよねっ」
私は舞い上がってしまって大事なことを忘れていたみたいです。
幸運だけじゃ幸福にはなれないんだって分かっていたつもりだったのに。
きっとひとりで来てたらこのおみくじにがっくり落ち込んじゃってたと思います。
アイドルになる時も、今日こんな日も、ひとりでは分からなかったことがあります。
そんな私に、今まで知らなかった幸せを、ていねいに教えてくれる人がいました。
「茄子さんは、運だけじゃなくて自分で願いを叶えられるようになったんですから」
「きっと神様もそのままで頑張りましょうって言ってると思いますよ」
こんなささいなことでも私の世界に彩りをくれてありがとうございます。
上手く言葉にできなくて、くしゃっとした笑顔を精一杯返します。
私はずっと分かっていたつもりのことをもう一度思い出したんです。
運が良いだけの私を、幸せな人に変えてくれるのは、あなたなんじゃないかって。
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