86:名無しNIPPER[saga]
2018/03/04(日) 22:52:38.34 ID:UQRBQo4z0
雪ノ下「そこからは私にも、拒否権はなかったわ。ある日突然、クラスメイトの葉山くんと結婚するんだと言われて、反抗。まあもっとも、当時はそんな事情なんて全く知らなかったけどね。数年後に姉さんが教えてくれたわ。それだけの事よ。」
そう淡々と雪ノ下は言ってのけたが、小学生の少女が突然そんなことを言われたらどう思うだろうか。幼くして、自分の人生の最も大きなイベントを決められたことによって、少女はどんな風に思ったのだろうか。
八幡「…それは、あまりにも酷いんじゃないか。」
雪ノ下「…酷い?」
八幡「ああ、どう考えてもおかしい、人権もあったもんじゃない。」
雪ノ下「それはね、比企谷君。育ってきた環境の違いなのよ。昔の日本では許嫁なんて日常茶飯事だったし、誰も文句も言わなかったわ。私の家では、これは当たり前なの。」
八幡「…」
雪ノ下に反論する言葉が見つからない。普段はあんなに無駄なことを話せるのに、こういう時になんと言っていいかわからない自分に腹が立つ。
事実、雪ノ下の言うことは間違ってなかった。おかしい、おかしくないなんてのは、俺が勝手に俺のものさしで判断したことだ。彼女のことを、俺のものさしで勝手に測って、勝手におかしいだなんて決めつけるのは、どう考えても傲慢としか言いようがない。
雪ノ下「まあ、彼も段々大人になるに連れ、事の大きさを理解したようね。もっとも、私は許嫁になったあの日から、彼と二人で話したことはないわ。」
雪ノ下「ある意味で、私達両家は、お互いの弱みを握りあっているわ。片方が事実をバラせば、もう片方も道連れよ。だけどそれだけは避けたいの、双方ともね。ある意味で、この契約は不平等であり、平等なのよ。」
こうして、彼女の口から語られた真実は、彼女がいかにして現在のように強くなったか、そして葉山との関係性を説明する、ひどく捻じ曲がった、だけどまたどうしようもなく説得力のある事実だった。
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