42: ◆5AkoLefT7E[saga]
2018/01/13(土) 00:09:34.01 ID:TDi1TcfI0
「ええと……な、なんで私だったの……?」
「え? うーん……なんというか、”背中を押したい!”って感じたから……みたいな」
「背中を……押したい?」
「ああ、多分、裕美のファンはそう思っている人、多いだろうな」
「……」
「”自分に自信がないんだろうな”ってのはすぐにわかったよ。だからこそ俺は、君の力になりたいと思った。客とか、事務所とか、そういうのじゃなくて、本人と向き合って。”この娘にとって、この活動がプラスになるように”って願ったんだ」
「……」
「それに、初めて会った時のこと、覚えてるか?」
懐かしむように、続ける。
「俺は”アイドルになりたいの?”って聞いたんだ。それに対して裕美はなんて言った?」
「……そんなの、覚えてないけど」
「俺は覚えてる。裕美は”私にはなれない”って言ったんだ。でも、”なりたくない”とは言わなかった」
「そう……だっけ」
「そうだ。理由なんてそれだけで十分だろ? 女の子をアイドルにすることが仕事の野郎の前に、アイドルになりたい女の子が居たんだから」
そう言って、ずっと真面目な顔で話をしていたプロデューサーさんは少し、微笑んだ。
出会ったこと自体は偶然だった。
それでも、それは意味のある、奇跡みたいな。
「プロデューサーさん」
「……」
「私、頑張るね」
「……ああ」
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