4:名無しNIPPER[saga]
2018/01/12(金) 22:36:56.03 ID:QHT5/WDno
友奈「ぐんちゃん、何を言って──」
シュタッ
銀「すみません樹さん、運んでもらっちゃって。……まったく千景さんったら今更そんな悪ぶらなくても良いでしょう?」
友奈(銀ちゃんが樹ちゃんに抱えられて、私の隣までやって来る。その後ろには──頭がごちゃごちゃな私だけど、これだけは本当に……本当に"良かった"と、心の底から思えて……私は嬉しかったんだ)
千景「事実を言っているまでよ、三ノ輪さん。……それにしても、まさかあなたまでこの早期に姿を見せてくれるとはね」
千景「……ねぇ、風先輩?」
友奈(今やって来たのは樹ちゃんと銀ちゃんだけじゃない。風先輩も居て、自分の足でこの場に立っていた)
風「……」
風「……みっともない姉で、本当にどうしようもない部長だけど……樹が、私の妹が、前を向いているのよ……。あの樹がよ……? だったら……姉であるアタシが、ずっと下を向いて座っているわけには、いかないでしょ……!」
千景「……そう。少なくとも私の知っている同じ時間の風先輩よりも大分マシな顔になっているようね」
風「……私が道を間違えたら皆が正してくれた。本当に言われた通りになったのよ。……あんたから貰った言葉にもアタシは勇気づけられた。だから、アタシにもう一度前を向かせる、そのきっかけをくれたのは、間違いなく千景なのよ!」
千景「……相変わらず素直過ぎて、お人好しも過ぎる人ね」
友奈(……私は風先輩に頼ってばかりだったけど、風先輩は、ぐんちゃんにだけは弱音を見せていて……いつも敵わないなって勇者部の皆はこっそり思っていたんだよ……? 多分形は違うけど、二人は私と東郷さんの関係に近くて……ぐんちゃんは風先輩にこうして何かを行ってくれたから、風先輩は立ち上がったんだ……)
友奈(……まだ何もできていない私と違って、ぐんちゃんはもう……風先輩を守っていたんだね……。……それなら私は? 風先輩を止めたのが本当はぐんちゃんなら、何もできなかった私は今東郷さんに何ができるの? そう思った瞬間、頭の中にもやが掛かり、アニメの結城ちゃんがどんな行動をしていたのか、私は何故だか思い出すことができなくなってしまう)
風「で、これは千景の望む未来に必要なことなの?」
千景「……さぁ、どうなのかしらね? ただ一つ言えることがあるとすれば」
千景「──それを決めるのは私でなくてあなたたちよ」
友奈(ぐんちゃんの強い意志を感じる瞳が、私を含めた全員を見た。──ここでようやく私は気付く。ぐんちゃんがいつものぐんちゃんで、何も変わっていないことに今更気付いたんだ。……本当に遅すぎるね、私……。だから自分が行わなければならないことも思いつかないし、こうして黙っていることしかできないんだ……。頭の中はさらにグチャグチャになり、私は自分自身がよく分からなくなっていく)
千景「東郷さん。全員が揃ってしまった以上、私も不干渉と言うわけにもいかなくなったわ」
東郷「元々私一人が始めたことよ。それに何があっても私は成し遂げてみせるつもりだけれど……そう言う意味の言葉ではないのよね?」
千景「理解が早くて助かるわ。特別に、犬吠埼姉にも伝えた言葉を聡いあなたにプレゼントしてあげる」
千景「──あなたの信じる道を進みなさい、東郷美森。間違っていたらあなたの仲間が何度だって正してくれるわ」
友奈「……っ……!?」
友奈(ぐんちゃんの言葉にドキリとした)
友奈(だって、私が行うべきことを今教えてもらった気がするのだから。……もやが掛かっていた記憶は少しずつだけど晴れていき、私がここに居る意味をゆっくりと確実に、思い出していく。──私の記憶は私の心に左右されているようだった)
美森「……ありがとう。千景ちゃんはやっぱり優しいのね」
千景「あなたに言われると嫌味にしか聞こえないわ」ハァ…
美森「くすっ。……そうなのね、私はまだ笑えるのね」
友奈(東郷さんから次に私へと、ぐんちゃんの視線は移動する。ぐんちゃんの優しい口調が聞こえてきた)
千景「正直、詳しい事情は分からないわ。けれどね、私も私の願いを叶えるために今ここに立っているの。……元の世界に帰りたいと言う願いは初めから変わっていないのよ。そして、その願いはいつだって──」
千景「あなたと共にあるのよ、高嶋さん」
友奈(真っすぐに私を見つめて、ぐんちゃんは宣言する。私の行うべきことはまた少しずつ見えてきて『ああ、そっか』と思った。ぐんちゃんは、私の正体に……気付いていたんだね……)
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