636: ◆7Ub330dMyM[saga]
2018/02/15(木) 11:04:05.95 ID:TxY5L79TO
王様「生きて逃げおおせると思っておるのかぁっっ! 例え……っ! 例え、逃げられたとしても生きた心地のしない逃亡生活が待っておるのだぞっ⁉︎」
ジャン「これは異なことを申される。私の素顔を王はご存知でない」
王様「ぬぐ……っ⁉︎」
ジャン「ハーケマルの使者だと気がつかずとも、一言、“仮面を脱げ”といっていればよかったのに。自身の落ち度に対して卑怯とは、おっしゃられますまいな?」
王様「ぬぐぐっ」ギリッ
ジャン「逃げることには変わりがありませんが、わざわざ姫を拉致したのは別の理由がある」
王様「別の、理由じゃと……?」
ジャン「金銭の要求や、魔族を引き合いに出すのではありません。今回起こったことを、民に公開するのです」
王様「な、なに……?」
ジャン「無論、他三国はもちろんのこと、ハーケマルに詳細を知られることとなるでしょう。姫の政略結婚は、一時見送りになるやもしれませんね」チラ
姫「……っ⁉︎」
王様「こ、これを、醜態を公開せよ、と」
ジャン「王様、世間を縦だけてはありません、横もあるのです」
王様「なにが言いたい」
ジャン「縦とは階級社会、横とは、支配される者とされない者。つまり、民の世界です」
王様「……」ギロッ
ジャン「あんたら王族、貴族、豪族はあくまで縦の存在だ。横になってる民の上で成り立ってる。無知なまま、蓋をして終わらせようとするな」
王様「民は、王政に幻想を抱いておる。“王様にまかせておけばいい”、“まかせておけば安心して暮らせる”。日々の安心感を捨て、民に暴風に晒された生活をしろと」
ジャン「……」
王様「ガラス張りで透明性のある政事などしていては、統治など到底無理だ! なぜならば、ワシら王族も、貴族もっ! 全て、人だからじゃ! 聖人君子などおらん! 失敗もする!」
ジャン「……」
王様「民は口先だけの集まりなのじゃ! 口では、クリーンな政治を求めておきながら、その実、“平和”や“安心感”というボヤっとしたものがあればいい!」
姫「お、お父様……」
王様「此度の件を公開する? ふん、それで? その後はどうなる? 報告してなにを得られる? 民たちは不満を抱え、ワシは王としての権威を保てなくなる」
メイド「……」ゴクリ
王様「問おう。民達の弾弓に耐え、どうやって統治を……この国を治められようか? 方法があれば、聞こうではないか」
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