勇者「ニートになりたい」
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620: ◆7Ub330dMyM[saga]
2018/02/14(水) 18:21:57.33 ID:bGKI1MBBO
【魔王城 玉座】

大臣「魔王様、この老いぼれにはなんのことやさっぱり」

魔王「――……アイデンティティ(自己証明)の喪失。聞いたことはあるか?」

大臣「いえ」

魔王「ふふ、“ゲシュタルト崩壊”でもよい。兎角、勇者は己を見失っておるやもしれん」

大臣「な、なんですとっ⁉︎」

魔王「ふっ、くふふ、勇者であることを誇りもせず……逃げている。おそらく、人間と勇者の狭間で見失ってしまった。本来の自分を」ニタァ

大臣「ではっ⁉︎ 今の勇者は⁉︎」

魔王「心に偽りの仮面をかぶっておるはず。……常にな。ニンゲンどもの手前でだけ、“勇者を演じておる”のやも」

大臣「魔王ぁっ! これはまたとない機会でありますぞ!」

魔王「どのような機会と申すか」

大臣「揺れ動いているのなら、いっそ、我ら魔族側に!」

魔王「……だめだ」フリフリ

大臣「なぜっ⁉︎ 天秤がニンゲンどもの方に傾いてしまえば、脅威に!」

魔王「“どちらにも傾きうる”から問題なのだ。計りに重りを乗せるにはどうする……?」

大臣「追加で――」

魔王「“手がなければ乗らぬ”であろう? この、手が」プラプラ

大臣「(傾く重りを我々で用意するということですな)――では、計略を講じますか」

魔王「いや、なにもしない」

大臣「な、なぜっ⁉︎」

魔王「別にほしくないから。あちら(勇者)が来たいと言ったら考えるがなぁ! あっはっはっ!」

大臣「……っ!」

魔王「よいな……? なにもするな」

大臣「御意に」

魔王「あぁ、待て。アデルに密偵を派遣して、勇者の生い立ちについて調べさせよ」

大臣「は?」

魔王「調べるだけでよい」

大臣「ははっ!」ドゲザ


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